第21夜
「躊躇いも罪悪感も持つ必要はない。影もオマエを殺す為に現れる」
「な、何で……」
「影は本能で本体に成り代わろうとするからな。その為には本体に消される前に、殺すしかないって知ってんだよ」
殺し殺される関係だなんて、何処のファンタジーノベルの世界だよ。と言いたくなる
まさか自身の身に、そのような事が起きるだなんて思ってもみなかった。
否、思うわけがない。
「じ、じゃあ……もし俺が影を殺したら、どうなるんだよ」
「本体の元に欠落した感情が戻るだけだ。だがもしも逆の場合、オマエの自我は失われ影に本体を奪われる事を忘れるな」
「っ……」
自我が失われる。本体を奪われる。
そんな言葉にゾッとした
自分が自分でなくなると考えただけで恐ろしくなる
「言っとくが、くれぐれも影と和解なんて甘い考えは捨てろよ!」
「………」
つまりは成り代わられたくなかったら、殺す以外の手段はないと言いたいのだろう
「もう一度言う。消えたくなかったら影を必ず殺せ。俺の用件はコレだけだ」
「お前は俺の味方…と思って良いのか?」
忠告する為に現れたというのなら、そう思うのが打倒だ
けれどリュウトは白羽の言葉に対し鼻で笑う
「俺は『傍観者』と言った筈だ。お前の味方でも影の味方でもない。俺をアテにするのは無駄だ」
「じゃあ俺と影の殺し合いを傍観する事で、アンタに何のメリットがある?」
正直、味方するから代わりに何か条件を出されると思っていた
だが味方をするつもりはないという
何のメリットもなく、ただ忠告しに来たというのは考え難い
悪魔を名乗るなら尚更だ
「別に?単なる暇潰しだ。だから俺を退屈させないよう、せいぜい派手に殺し合えよ」
「………最低野郎」
人の気も知らずに、暇潰しなどと宣う男。
信じるつもりはなかったが、ゲスな発言に悪魔だと認識せざるを得ない
思わず深い溜め息が漏れた
「最低とは、とんだ褒め言葉だな」
「事実だろ……」
「まぁいい。そんな最低の奴からオマエにプレゼントをやろう」
リュウトの手から放られたモノを反射的にキャッチする。
だが受け取った矢先に後悔した。
悪魔からのプレゼントなんて呪いのモノではないのか。
恐る恐る掌を広げてみる
「白い羽のペンダント?」
「安心しろよ。オマエの身を少なからず護るモノだ。身に付けておけ」
「あ、ああ……」
禍々しいモノだと思っていただけに、あまりにも普通で拍子抜けしてしまう
更に呪いではなく身を護るというのだ。
「じゃあな、せいぜい影に殺されんなよ」
言いたい事だけ告げると、リュウトは瞬きする間もなく一瞬で姿を消した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます