第17夜
薄暗く淀んだ路地裏へと『男』は足を踏み入れた
アスファルトには血痕の染みが生々しく残っている…
「姿を保つのも大変なようだな」
そして何の躊躇いもなく、闇に溶け込むように潜んでいる人物へと声を掛けた
「……誰だ!」
その瞬間、相手の警戒と殺気が一気に膨れ上がる
ビリビリと伝わってくるオーラは、刃物のように鋭い
けれど殺気を向けられても男は表情を変えない
「凄い殺気だな。取り敢えず落ち着けよ」
「誰だと言っている…っ!」
問いに答えない男に対し、相手の殺気は更に鋭さを増した
「まぁ、俺は『傍観者』って所か」
「傍観者だと?」
「ああ、オマエとアイツの傍観者だ」
『アイツ』とよく似た容姿をしている目の前の存在に不敵に笑いかける
「お前から……白羽の匂いがする……」
「さっきまで一緒にいたからな」
「殺す……白羽に近付く奴は全て…っ!」
先程までとは比べ物にならないくらいの殺気が、一気に膨れ上がった
目の前の存在にとって『白羽』は、狂気染みた執着の対象だと伺える
「言っておくが、そんな玩具では俺を殺せない」
主に凶器として使用して来たのであろう、握られている鋭利な刃物に視線を向けた
この世の生き物には致命傷を与える事が出来るが『そうでない存在』には何の意味もなさない
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