玲奈の家族は異常だった。母親が妙な宗教団体の教祖をしており、信仰を強要してくるのだ。普通を渇望していた彼女は進学を機に実家を出て、家族や宗教と距離を置く。そして聡太と恋に落ち、彼と普通の家庭を築こうとするのだった。
様々な出来事が起こりつつも、物語自体はじわじわと進行していく、良い意味で先の読めない作品でした。作者様の巧みな技法に転がされ、読めば読むほどに面白さが膨れ上がっていきました。
ぜひ最後まで読み進めてほしい作品です。一切のネタバレ無しで! そうすることで、仕掛けを目一杯楽しむことができます。
(なので、未読の方はここから先の感想は読まないことをオススメします。ネタバレにならないよう最大限の配慮はしたつもりですが、作品の仕掛けを100%楽しむには、何の前情報もない方が絶対に良いです)
玲奈の視点を通し、読者も「信之丞様に対する印象が変わっていく体験」をすることができました。
ファンタジーの中では異能や化け物退治、覚醒といったものはとてもカッコいいものです。でも現実やオカルトホラーの中では、途端に胡散臭いものになる。読んでいて、その線引きが揺らぐ感じが面白かったです。
物語の中程で読者に突きつけられる、今まで見えていなかった異常。
そこからは至る所から普通というメッキが剥がれ落ちていき、後には「自分本位」、「自分にとっての正しさ」というものが残ったように思います。だから、ずっと上手く噛み合うことがない。呪われた一族、と思いました。
読了してから改めてキャッチコピーを見て、「ああ…………」となりました。地獄ですね。