第30話 感謝

 月斗から連絡があった。

「理奈が、受験する前にあってあげてくれないか。」

 三者面談とか進路相談など全部、月斗がやってくれていた。

「いいの?」

「理奈は、不安みたいなんだ。会ってあげて。」

「分かった。」

 受験の前々日に理奈に会った。

「ママありがとう。鎌倉北高校を受けるの。自信がなくて。」

 鎌倉北高校は、県立高校ではトップクラスでは、ないが上位の学校だ。

「おめでとう。」

「まだ、受かっていないよ、ママ。」

「嬉しいの。高校受けられるまでになったんだなぁ。理奈、頑張ったなぁって。」

「ママ泣いているの。」

 自然と涙が溢れていた。

「ありがとう。ママ。私、高校を受けられるまでになったんだね。今の力を出してくるね。」

 理奈と笑顔で手を振って別れた。


 受験の日は、理奈を思って働いた。

 合格発表の日。月斗から電話があった。慌てて電話に出ると、

「ママ、合格したよ。春から高校生だよ。」

「おめでとう。頑張ったね。」

 涙で、それしか言えなかった。

「ママ、僕だよ。理奈に声をかけてくれてありがとう。あの後、とても落ち着いて、受験を迎えることができたよ。」

「私なんか、何もしてないわ。」

 電話が、月斗に代わった。

「21日の理奈の卒業式、一緒に出てくれないか。」

「え?私は、出る資格はないわ。おめでたい席にふさわしくないから。」

「そう言うと思ったよ。理奈も出てほしいって言ってるんだ。」

「・・・・ありがとう。」

 言葉を絞り出した。

 卒業式当日、2人は正門の前で待っていてくれた。

「ママ、今日は、ありがとう。」

「理奈、おめでとう。」

 3人で桜の下をくぐり、式場で証書をもらう理奈を見つめた。月斗が、

「学校に行けなかった、彼女が、あそこに立ってるだけで泣けるな。」

 と私の耳元でささやいた。

「うん。ごめんなさい・・。」

 理奈を、あんな酷い形で悲しませた私に、再び母らしい時間を与えてもらった。


 卒業式の看板の前で3人で写真を撮った。

「これ、宝物にするね。今日はありがとう。」

 2人に背を向けて別れた。家族を裏切った私に、こんな1日を過ごさせてくれた2人に、義父母に感謝した。

 「ありがとうございます。」


 




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