第3話 出会い

 私と月斗は、同じ高校だった。私はテニス部、彼は陸上部、初めて出会ったのは体育館のステージ袖。インターハイ出場者の壮行会。私は部の仲間と一緒。彼は1人だった。小声でワイワ話す私たちの横で、静かに1人立っていた。

 ステージ上でキャプテンとしてあいさつする私。

「本校の代表として、全国ベスト8以上を目指して、チーム全員で頑張ってきます。」

 そして、全員で決めポーズ。拍手喝さいを浴びた。続いて彼。

「400Mに出場します。自己ベストを目指します。」

 静かな声で言葉少なにあいさつした。拍手も静かに響いた。

 インターハイ。私たち横浜夕日丘高校は、よもやの1回戦負けを喫した。楽勝と見ていた東北代表に逆転負け。油断による焦り。私たちは泣いた。傷心の私が見た新聞記事は、彼の4位入賞を報じていた。表彰台をあと1歩で逃すも、

「自己ベストを出せたので満足です。」

 とコメントが載っていた。あんなに自信なさそうだったのに。

 そして、私は、AO入試いわゆる推薦で慶良大に進学した。偶然にも彼も慶良合格をしていたことを卒業式で知った。同じなんだ・・。

 入学式、テニス部推薦組の輪を離れて彼の姿を探した。同じように陸上部推薦の新入生たちの中に彼を見つけた。

「私のこと覚えてる?同じ夕日丘のテニス部の吉岡陽花ひかテニス部の。」

「覚えてる。」

「麻生君も、AOだから総合経営学部でしょ。よろしくね。」

「よろしく。」

 言葉が少ないのに嫌な感じがしない。全国4位なのにまったくその雰囲気を感じさせない。自信がなさそうでもない、独特で静かな感じを纏っていた。そこに惹かれた。

 同じ学部なので一緒の講義も多く、近くに座ったりグループワークを一緒に組んだりした。テニス部の練習の合間を見て、競技場に彼の練習を見に行った。そして、彼の地道に努力する姿勢と、思慮深さを知った。

 目標をもって、それを公言して頑張りぬく、「有言実行型」の自分とは、真逆の姿勢が新鮮だった。


 同じ学部やテニスの同期の仲間や先輩、いわゆる陽キャの男子から、大勢告白を受けた。一緒にいて楽しい人たち。

「俺たち、気が合うしタイプ一緒だろ。付き合わない。」

 全部、断った。彼に惹かれていたから。我慢できずに告白した。

「ねえ。麻生君。あなたが好きなの。私と付き合ってほしい。」

「君は、僕と君では、性格が違うし、僕たちはうまくいかないと思うよ。」

 予想外にも、あっさり断られた。でも、何度でも食い下がった。彼が欲しかった。自分にない魅力をもった彼が。

「分かったよ。付き合おう。その代わり、僕に満足できない日が来たら・・。」

 彼の言葉を、私の言葉で遮った。

「そんな日は来ないようにする。約束する。ありがとう。」

 私たちは、付き合い始め、彼と彼女。月斗つきと陽花ひかと呼び合う仲になった。



 


 

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