思いつき粗雑ショートショート未満

@Intriguing-Corridor

死にたい

 やらかした。



 バイト先のスーパーで、トマト缶の発注の量を二桁多く入れてしまった。


 店長にしこたま怒られた。


 同僚の目が怖くて見れなかった。


 憂鬱だ。


 明日からどんな顔してバイト先に向かえばいいんだ……?



 バイトの帰り道。もはや歩く気力すら浮かばず、近くの公園のベンチに座りこむ。



 公園では、どこの誰かも知らない子供が遊んでいた。

 夕陽に照らされ、随分とその笑顔が輝いて見えた。


 あまりに眩しいので、つい下を向く。視線を逸らしたかった。


 自分の影が目に入った。



 ふと、



「はぁ……死にたい」




「死にたい?」




 その声は、後ろから聞こえた。


 その気配には気づかなかった。



「ねえ、死にたい? 死にたいの? 死ぬ? 死ぬの? 殺していい? 殺してあげよっか?」



 気配は捲し立てる。


 その声は男のとも女のともとれない、もやのかかったような声であった。


 不気味だ。


「……し、死にたくない、です………」


 この声に従ったら、取り返しのつかないことになる気がした。



「……………そう。」



 声は残念そうに言った。


 気配が消えた。



 後ろを振り返るも、そこには誰もいなかった。



 ふと、子供の方を向く。目が光に慣れたのか、子供の笑顔も良く見えるようになっていた。





















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