陰キャで経験なしの私が、陽キャで経験ありのSSSR超絶美少女白凪さんと週に一度キスする契約を結んだら、どこまでも依存しあって堕ちていった件。

しんこすたんじ

陰キャで経験なしの私が、陽キャで経験ありのSSSR超絶美少女の白凪さんと週に一度キスする契約を結んだら、どこまでも依存しあって堕ちていった件。

放課後を告げるチャイムが鳴るとともに一通のメールを受け取った。それはクラスの中心人物で明るく天真爛漫な天然タイプ、白凪紅葉しろなぎもみじからだった。


白凪)『今日は、キス、する……?』


当人のほうを見ると、心なしか潤った目をしており、それを渇望しているかのようだった。


週に一度キスをする関係。

ただそれだけ。


陰キャぼっちの私が、どうして陽キャの彼女とそんな関係になったのか。

時はさかのぼる。


■■

「紅葉ちゃん、次もよろしくね」

「はいっ」


塾帰り、それは確か11時くらいだっただろうか。

近道をしようとホテル街を通りかかったとき、金髪ピアスの男と並んでホテルから出てきた白凪さんを見たときは流石に驚いた。

明らかに父親でも兄でもないその男は去り際に茶封筒を渡し、白凪さんの艶のある唇にキスをしてその場から離れた。1人残された白凪さんは茶封筒の中身を確認していた。1万円が何枚も入ってたのをおぼろげながら覚えている。


ああ、そういうことか。


その瞬間、私は理解する。

教室では華のような笑顔を振り向くクラスの人気者も、その裏ではお金のためになりふり構っていないのだな、と他人事みたいに思った。

そして同時に同性として可哀想だな、とも。

だからこれは多分、気分だった。

私は引き返すことなく、彼女の方向へと歩く。


「お金に困ってるのなら、私としませんか?」


幸い私はお金には困っていなかった。

だから彼女の要求を満たせると思った。

何より、お金の矛先を男性に求めるのは馬鹿げていて、哀れだった。

それなら女に向ける方が幾分もマシだ。


私に気がついた白凪さんはただ唖然としていた。そりゃそうだろう、後ろめたく恥という単語では到底言い表せないような情事を知られたのだから。それもぽっと出のクラスメイトに、だ。私なら悶絶して引きこもる。最も、私はそんなことしないのだが。


「大丈夫、言いふらしたりしないよこんなこと」

「えと、ありがと……」

「バレたら学校生活が大変だもんね」

「うん……」


情事がバレた白凪さんは、悪いことをして咎められた幼稚園児のような顔をしていた。

それから数秒の沈黙が続きお互いどうしようみたいな雰囲気になったところで、彼女のほうから提案があった。


「あの、えと、少し場所を変えて話さない?」

「ん」


時刻は11時手前。

さすがに今からカフェは無理だろうし、そもそもそんな場所でできるような話題でもないだろうということで、人気のない近くの公園に移動した。


「流石に12月は寒いね~」


だいたいのことは時間が解決してくれるというのは本当なのか、彼女は少しだけ余裕を取り戻したようだった。


「前置きはいいから、本題に入ろうよ」


こんな塩対応だから人が寄ってこない陰キャなのだろうか、という悲しい推測が頭をよぎったが結局特に人に好かれたいわけではないのでどうでもよいという結論に至った。


「白凪さんはお金に困ってるんだよね?なら男とするより女の私としたほうがマシだと思わない?まあただの偽善だから私が嫌になったら関係解消だけど」

「えっと……」

「お金のことについてもさっきの人と同じ額用意できるし、それに誰にも言わないよ?」

「あのっ……!!」

「なに?」


もしかして勝手に話を進めてしまったのが不服だったのだろうか。それか正義のヒーロー気取りをしている気に食わない奴とでも思われただろうか。


「もう知られたし、全部言っちゃってもいいか……っ」


そうして彼女は私のほうを向き直して開き直ったように、あるいは投げやりになったかのように言い放った。


「わ、私は別にお金がほしいわけじゃなくて……」


そして、一拍置いて。


「ただ誰かに認めてほしいだけなの!!」


……はぁ?


「えと、あの、初めてしたときに相手に人がすごく私を求めてくれて……。それで、承認欲求が強い私は今までにないくらい満たされて……。だ、だからこれは誰かに自分を求めてもらうための手段で……!」


その結果お金が付いてきただけですよ、と。

つまりはそういうことらしい。


「……バカなの?」


咄嗟に口に出たのはコップ一杯のキャパを超えても水を注ぎ続けるアホを見ているような、そんな類の呆れの言葉で、そしてかつてないほど最大限の呆れの言葉だ。


「え…?」

「だってそうじゃん。その行為の意味も知らずにただ自己承認のためだけに体を張るって、やっぱりバカだよ」


でもバカは彼女だけじゃなかった。

どうしてかって?

それは。


――やっぱり私でいっぱいに満たしてあげる。だから私としよう。


■■

はじめて家に呼ぶのがクラスで一番かわいい陽キャの女の子なのだから、不思議なこともあるものだ。

親は仕事だから、私たちだけの空間だ。

だれにも邪魔されない。

さっそく私の部屋に案内すると、口々に私の部屋についての感想を言い出した。どうやら物寂しい部屋、らしい。物欲がないせいだろうか。


二人とも私のベッドに腰掛けた。


「ね~、白凪紅葉ってさ、苗字と名前の色的に足したらもうそれピンクになるじゃん!って思わない?」

「思わない、理解不能」

「っていうことは私の脳みそピンクだと思わない?」

「そう思う、理解可能」

「このやろー!」


アホみたいな会話を続けること数分。


「そろそろ、いい?」

「……いいよ」


何がとは言わないが、お互いに分かっていた。

白凪さんの手がおもむろに伸びてくる。


頬をすーっと滑るように撫でられた。

愛玩動物に触れるような丁寧な手つきだ。


淡い薔薇色に紅潮した頬に、桜色の唇を湿らせる白凪さんの顔が近くなって。

そして。


「……ん」

「……っ!?」


唇に、ふにふにと柔らかい感触。

それから、ちゅっ、ちゅっ、と水音が聞こえた。


(な、なにこれ!?)


意味わかんない。唇めっちゃ柔らかい。


知能指数がどんどん下がる。

頭がぽわぽわして何も考えられない。


間近にある白凪さんの顔を見る。

頬は完全に淡い薔薇色に紅潮していて、目はとろんと蕩けていた。


それからお互いの唇を貪りあって体感数秒。

キスだこれ。それもクラスメートの女の子と。


迷いがあった。

持ち掛けたのは自分だ。

でも。

だめ、駄目だこんなの。

だってこんな、恋人でもない人と見境なく口づけ、なんて。

急に我に返った私が抗議してきた。


「りんちゃん、すごく気持ちよさそうな顔してたよ?」


それでも目の前には荒い息遣いをしながら淫らかな声で囁く白凪さんがいた。


そうしてベロで下唇を舐めて。

私とのキスで湿った唇を……


「……っ」


その瞬間、何かが壊れる音がした。


おもむろに白凪さんの両頬に手を添えて、華奢な体を引き寄せる。

後のことを考える理性なんて残っていない。


顔を傾けると、白凪さんは私の肩に手を置いて目を閉じた。

それが受け入れられたみたいで、気持ちがいい。


そして。

再び、室内に水音が響く。


何度かついばむように、口づけをした。

柔らかくて、甘くて、瑞々しい。

繰り返すうちにお互い、溶け合ったみたいに唇の境界の感覚がなくなっていくのが分かった。


それから、私はクラスで一番可愛い女の子とキスをしているんだと実感した。

遅れて背徳感が込み上げてくる。

脳みそが痺れるような強い刺激。

もっと繋がりたい。

もっと、知りたい。


もう、我慢できない。

理性が飛び、歯止めが効かなかった。


衝動に身をまかせて相手の唇を舌先でたたく。

それは単なる口づけよりも深い儀式への確認作業であり――。


「……んっ!?」


ぱちり、と至近距離で瞬く褐色の瞳。

でも拒絶はされなかった。


私はそれを合図と捉えて、唇をゆっくりと開く。

白凪さんはその深紅に染めた頬に恥じらいを見せながらも、私に合わせて唇を開いてくれた。

それがシンクロしているみたいで、気持ちいい。


そして自分の体温とは違う呼気を感じてまもなく。


――ぴちゃっ。


お互いの中間地点。


舌先が口のなかに入れたことのない、何かの感触を感じ取る。

それは自分のものとは違う、唾液でぬるっと湿った、肉感のある甘い何かで。

触れてすぐに求め合うように絡め合う。


自分より少し熱い生の体温。

唇同士の隙間から垂れる、温かくねっとりとした唾液。

そして何より。自分が目の前の女の子を犯しているんだという、強い背徳感。


それらを直で感じ、官能的な刺激が収まらない。


「もっと……もっと、私を求めて……っ…」

「……はぁ……は、ぁ……」


もう、止まらない。

筆舌には尽くしがたい快感の波が押し寄せては私の脳を侵食する。


(これ、やばい……っ)


ぷはっ、ちゅっ、ぷはっ、ちゅっ、ちゅっ……。

荒い息遣いと湿った水音だけが室内に響きわたる。


どこまでもどこまでもお互いを貪りあって。


「週に一度、キスする関係」


私は白凪さんに快感を求める。

彼女は私に承認を求める。


歪で淫らで不完全。

そんな底なし沼にはまった。


後戻りはできない。


ただ墜ちていく。

無制限に。

どこまでも、どこまでも。


――白凪紅葉といっしょに。

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