明日、僕達は旅に出る
夢乃間
旅の終わり
第1話 終戦
夜の雲と見紛う暗い空の下。降り注ぐ雨に構わず、三人と騎士が集っていた。眼前に佇むのは墓。そこに刻まれた文字は【勇者は永遠なり】の一言のみ。故人の名は刻まれていない。
三人はそれぞれ持ち物から一つを墓の前に置いた。
一人は矢を。
一人は斧を。
一人は剣を。
騎士は佇むばかり。彼らが墓の前で跪く姿をただ眺めていた。
矢を失った長身のエルフは鋭い眼で騎士に忠告した。
「再び相まみえた時、その時は貴様の心臓をこの矢が穿つ」
斧を失った老いた僧侶は慈悲の言葉を騎士に贈った。
「いずれアナタにも旅の兆しが訪れる」
剣を失った隻腕の男は騎士の首飾りを奪い取った。
「お前には不必要な物だ」
そうして騎士だけが取り残された。武骨で装飾の類が一切無い鎧。黒色から変化出来ない加護を施こされ、全身に纏った鎧を脱げぬ呪いを掛けられているが、それ以外の加護や呪いは一切施されていない。ただの鎧だ。
黒騎士は墓の前で跪くと、氷の魔法で模った花を作り上げた。それは何処にでも見かけるような、それでいて名前が知られていない花であった。黒騎士の魔力で模った花は降り注ぐ雨を跳ね返し、墓の前に置かれた剣や斧や矢にも劣らぬ耐久性があった。
雨が止み、そこら中に出来た水溜まりが陽の光で輝く頃。墓の前には誰もいなくなった。
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