45.隠れ家の一幕 その4

【アミュー視点】


「ねえ、サインの腕くっついた?」

「…まだだな」


サインの腕を撫で撫でしながら聞く。どうやらまだらしい。あれから1週間も経ったのに…人間ってそんなに弱いの?


「むー、じゃあまだ外に出れない…」

「そうだな」


サインの腕が万全じゃない状態で外に出すなんてできない。怖すぎる。でもさすがにそろそろ暇すぎるの…


でも終戦期?ってやつらしいから私一人で外に出てもきっとつまらない…あっ、サインの持ってる情報端末が鳴ってる。


「もしもし…ああ、今開けるわ」


どうやらお客さんが来たようだ。


「やほー、久しぶりね先輩!」

「どうもアミューさん、お久しぶりです」


ミツガレと鍵屋だ。


「うわっ、すっごい隠れ家ね…壁が武器だらけじゃないのよ…しかもドデカイ人型兵器まで…」

「凄いですよねー、でも動かないんですよあれ」

「デカい粗大ゴミじゃない」

「オイコラなんてこと言うんだミツガレ」


なんかそんなに経ってないのに、久しぶりな感じがする。そしてサインの群れは心がポカポカする…不思議。


「鍵屋と後輩!久しぶり!鍵屋の技この間ちょっと使えたよ!」

「おー、やっぱりできました?アミューさんなら多分使えるだろうなと思ってましたよ」

「…あなた先輩に何したのよ」

「鍵屋はアミューに自分のハック端末を喰わせてくれたんだ。死んだ人間のパワーアーマーが滑らかに動いててキモかったわ」

「ああ…あれね…」


なんかやってみたらできたんだよね!集中して…見て?命令を送る?と動く?みたいな…自分でもよくわからないや。


「ってかなんで2人揃ってんだ?まさかホントに付き合ったのか?」

「そうよ?私は鍵屋と付き合うことにしたのよ」

「ええ、あの後始末をやった後にもう一度お願いしてみたらオーケーが貰えました!」


おー、おめでとうだね!

…なんかサインが鍵屋を連れて離れる。


「鍵屋…」

「言わないでくださいよサインさん?ようやくできた彼女に要求しませんて!ああいうのはファンタジーみたいなものです!」


なんかサインと鍵屋が肩組んで話してる…いいなぁ


「あっ、先輩にお土産よ?畑を作り終わった後にドクターが用意してくれたわ。『アミューさんには多大なる感謝を!』だって」


後輩が私に白く塗られた密封容器を渡してくれた。中身は…


「メロンだ!!」

「ええ、普通に育てたらもっと時間がかかるらしいけど、ドクターが…サクサク育ててたわ?」


ドクターありがとう!今度会ったら絶対お礼言う!


「良かったなアミュー、メロンじゃないか。大事に食べるんだぞ?」

「うん!」

「あっ、保存処理とかしてないらしいので腐るの早いですから早めに食べてくださいね」

「じゃあ今!みんなで一緒に食べたい!」

「そうするか…鍵屋、切ってくれ」

「…ああ、その腕じゃ無理ですよねー。わかりました」


私は机を持ってこよう。




4人が机に座って切ったメロンを食べる。

「…広すぎて落ち着かないわ」

「サインさんの隠れ家の良いところでもあるんですけどねぇ」

「いいじゃねぇか。物置く場所に困らねぇぞ?」

「普通はこんなに武器拾わないのよ…嵩張るじゃない」

「嵩張ったら私が食べるんだよ!」

「ああ…」


私もアレから色々美味しい武器食べてるからね!


・GENESIS【残弾:8発】

・ヒュージガルガン【残弾:725発】

・クライMAX:1個

・多連装爆雷フレシェットランチャー【残弾6発】

・ショットガンラブア【残弾:30発】


サインの美味しい武器は、大きくて食べきるのに時間がかかるからまだ食べかけもたくさんあるんだ。


試しに両手を前に重ねてGENESISに変化させてみた。もちろん机に当たらないようにと、誰もいない方に銃口を向けて。


「これがGENESISですか。実物を見るのは初めてですね」

「サインあんたよく持って帰ってきたわねそれ…」

「…超絶頑張ったんだ」

「これって弾も無限に作れるんですか?」

「それは無理だよ。前にサインにも言ったけど食べた分しか作れないの」

「ふーん、不思議ですねぇ」


私もそう思う。というかできるのにできない?みたいな感覚な気もする。私の体がおかしいのかなぁ?


「弾も無限に作れたら…頼もしいわね」

「まあ、そんなん抜きにしてもアミューは強くて賢くて頼もしいからな」

「えへへ…」


サインに褒められるのがやっぱり一番嬉しい!


「あ、そうだ。畑ができてたのは聞いたが缶詰工場の方はどうだ?バラした後にちゃんと組み立て終わったのか?」

「終わったからこうやって遊びに来たんですよ…大変でした。姉御も現地に来て色々やってましたよ…」

「マジかよ姉御に会ったのか!俺まだ見たことないんだけど!」

「うん…まあ…きっと会ったら驚きますよ?」

「驚くわね」


サインも会ったことないんだ…こんな面白い人たちをまとめてるんだ。きっとすっごい強いんだろうなぁ。


「私も会ってみたいなぁ」

「先輩もそのうち会えるわよ」

「あっ、ジェネレーターの買取金渡してなかったですね。どうぞ」

「おいおい…ジュラルミンケースじゃねぇか…いくら入ってんだ」

「3500万エルンだそうですよ?羨ましいですねぇ」

「凄い金額だね!頑張って運んで良かったよ!」

「アミューと半分こだ。またヤミイチ呼んで一緒に買い物しようぜ?」


ヤミイチさんも優しいし面白いから好きだけど…


「私もみんなが物を売り買いしてるとか行ってみたい!」

「…そ、そうだな。品ぞろえはヤミイチ程じゃないけど、そういうところに行っても面白いぃかもぉなぁ…」

「やたー♪」


なんかサインの返事の歯切れが悪い気もするけどやっと許可が貰えた嬉しい!


今度は鍵屋がサインを連れて席を離れた。




【サイン視点】


「行ったら大混乱になりますよ絶対!」

「し、尻尾だけ隠せば…行けると思うんだ…」

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