42.ミートゾーン 脱出
【サイン視点】
俺は外に出たぁー!
森森した景色から一気に見慣れた荒野に出た。まだ安全とは言い難いが森の中よりマシだ。
今回の探索の成果は…食べれる生物兵器のお肉だけ!超赤字です。
いやここの肉が人気とはいえね?
高級な武器をブッパしまくって重パワーアーマーで飛ばしまくってりゃ元は取れんわ!
でも今回の目的はリビルとヴィクトール、2人に前線を歩く経験を積ませることだ。アミューがイツボシシェルターに行けるようにするための必要経費と割り切れば問題なイタタタッ!
そう、腕が折れても…
森から出ても透明のままのアミューが俺の右腕に引っ付いたままだ。なんでそんなに触るん?怪我してるところはそっとしておくのが正解なんですが?
「この景色、普段見ても何とも思わないが安心するな」
「帰ったーって感じがしますよね!」
「俺が言えたことじゃないけど油断はまだできないぞ?この瞬間を狙ってる人間もたまにいるくらいだ」
「…セコすぎませんか?」
俺もそう思うけど実際にやるやつはいる。ってかお前らの仲間もやってたからなそれ!ウチのアミューさん生後…半日くらいにぶっ殺されたけどな!
周囲を警戒しながら車の元に戻った。今回は俺達の車のところに賞金兵器がいることもなく、車もちゃんと無事だ。
「毎回あんなことがあっても困るけどな…」
「ん?なんの話だ?」
「いやな?この間リビルのとこで賞金兵器の賞金貰いに行ったろ?あれと戦ったのが帰りのこのタイミングなんだよ。車に戻る…」
「あー、そうだったんですね…」
「俺の車の上でロウさんが賞金兵器を足止めしてたんだぞ。攻撃の動作見て関節の隙間に弾丸を撃ち込めば動きが止まるだろって…」
「チッ…マジでバケモンジジイだな」
あの人はもう老衰でしか死なないんじゃないだろうか…その老衰もいつ迎えるのか全然わからないけど。
そのまま車に乗り込む…アミューが腕に引っ付いてて上手く車に乗れない。
「あの、アミュー?このままだと俺達車に乗れないぞ?」
「イヤ!私がサインを連れて帰る!おんぶする!」
イヤイヤアミューさんになっちまったよ…
ごめんて…腕折った時に心配かけたんだな。
マジで自業自得なので俺の心が痛いんだが。
「…まあ、この時間なら走って帰っても日が暮れる前には隠れ家に着きそうだが…」
アミューの足の速さと体力ならむしろ車より少し早く帰れるか…スカベンジズの2人のコソコソ話がこちらに聞こえてくる。
「もしかして俺達がお邪魔な空気っすか?シェルターに直帰にした方が良いですかね…」
「しかしなぁ、装備返さなきゃいかんだろ?」
「そうでしたね…体に馴染み過ぎて忘れてました」
…もう持ち帰ってくれてもええんやでそれ?あっ、隠すところがないか…
「じゃあアミュー、俺をおぶってヴィクトールが運転する車の横を走ってくれ。頼んだぞ?」
「うん!いいよ!」
透明で顔は見えないけど、多分満面の笑顔なんだろうなぁ。声のトーンが一気に上がったもん。普通に考えて罰ゲームの類なんだが…
「決まったか。じゃあ俺が運転するわ。リビルは助手席に座ってくれ」
「了解しました!」
ヴィクトールとリビルはさっさと車に乗り込みドアを閉める。俺の体は宙に浮く…そして車が発進すると同時に俺の体は水平方向に、車の横をスライド移動し始めた…なんだこれ。前と違って安定感抜群だ…
少し走ったところでアミューが話しかけてきた。
「ねえ、サイン…腕大丈夫?」
「大丈夫だぞ、安静にしてれば元通りだ」
「…サイン…多分私はあの人たちと仲良くなれない」
「どうしてだ?」
「………私の名前をあの人たちは呼んでくれない」
そういえば確かに、壁がある感じがしたな。アミューが怖かったのか?こんなにいい娘なのに。俺の群れのやつらをもっと見習え!でもやっぱり普通の人間だとそうなるもんなのかなぁ…
「なんでなんだろ…」
おっと、考えてる場合じゃない、慰めないと。
「アミューが悪いわけじゃないぞ。アレだ、相性の問題ってやつだろうな」
「そうなのかなぁ…」
「まあそこは別に頑張らなくてもいいだろ。アミューが嫌だったら嫌のままでいいんじゃないか?」
「ホントに?」
「ホントだ」
「…じゃあサインが怪我をするのが嫌だ」
話変わってますが?そういう話じゃなかったと思うんだけど…
「それはすまんな…次は気をつけるよ」
「気をつけてね!」
ってか鎮痛剤の効果切れてきた…超イテェ…
【ヴィクトール視点】
今日は色々勉強になった。確かに探索の時間は短かったが、ウォーカーの事情とか前線の世界について実際に体験できたのは十分良い経験になっただろう。
「前線ってもっと怖いもんだと思ってましたけど意外となんとかなるもんなんですね」
「ああ…でも多分色々教えてくれたアイツのおかげだろうな」
普通に前線に行けばあんな事前情報はない。生物兵器の倒し方もウソも無く丁寧に教えてくれた。
「それに、【安全】とはよく言ったもんだ。恐らくアイツの立ち回りも上手かったんじゃないか?」
「そうなんですかね」
「大体の戦闘は俺たちに有利になるようになってただろ?基本先制攻撃だし、戦闘中に他の生物兵器に群がられる…ってことも無かったしな」
「あー…」
普通は銃声が響けば一瞬で群がられて囲まれるはずだ。そして戦い続け弾薬やエネルギーが無くなり…
「とりあえずは俺たちもまだまだ未熟ってことさ。それを補うための外出だ。少しずつ一緒に覚えていこうぜ!」
「そうですね!」
俺たちはまだ学ばなければならない!
この車の横にいる、おんぶされる人の形のまま宙を水平移動している男に。
ちなみに生物兵器が銃声で寄ってこなかったのはサインが姉御の戦線予報の情報を見て予め今日は生物兵器が少ないという情報を得ていたからと、大体はアミューが暴れまわった際に散ったからであったりするため、立ち回りとかは何も関係が無かった。
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