33.スカベンジズのこれから
【ヴィクトール視点】
俺は自分の率いる今の隊の面々と、俺が卵探しのついでに行っていたついでに集めた新人達にこの間ふと思い出した過去を語った。
「これがあの【カタスノシェルターの惨劇】の真相だったんですか…」
「情報が錯綜しましたからね…しかし何故ヴィクトールさんはこの話を報告書に載せなかったのですか?」
「まあ、信じちゃ貰えねぇと思ったんだわ。っていうか目撃者達も何かしら細工されたのか言ってることが皆てんでバラバラになっちまって、俺のこの話すらも正直真実かはわからんところがある。不確かな記録を残すのは良くないからな」
みんな真面目な顔で私の話を聞いていたが、ここで先日引き抜いたリビルが手を挙げて聞いてきた。
「つまりこの間エランダシェルターに来たあのウォーカー共のトップがそいつなんですか…」
「そうだ、ウキウキ♪フロントラインウォーカー部だなんてふざけた名前を付けたトップがそいつだ」
「マジで名前だけだとふざけてるようにしか聞こえんな…」
「しかしなぁ、あまりに好き放題しすぎだぜ。お灸をすえないと流石にダメだろ…」
隊員たちもあまりの傍若無人ぷりに腹が立っているのだろう…しかし…
「…実は今そいつらと敵対できない理由がもう一つある。あの【ドクター】もこのグループのメンバーであることがわかったんだ…」
「うわ…それは…困りましたね」
ドクター、率いている肉人形の異質さを除けば、我々スカベンジズの中でも善良なウォーカーとして有名だった。
理由はドクターにしか治せない死病がいくつかあり、それらの薬をほぼ無償で我々に提供してくれているのからだ。
しかし無償で薬はくれるが作り方はわからない。誰かが教えてもらうことはできないかと遠回しに聞いてみたらしいが教えてはくれなかったという。成分を分析してもまるでわからない。
しかし薬自体は大量にくれるのであんまり引っ付いて機嫌を損なう方が危険だと判断して今は薬を定期的に降ろしてもらう関係に落ち着いていた。つまり…
「シェルターには何もかもが足りていない。我々も前線に命を賭けて赴く必要があるのだ…守るためには…進むためには…」
「隊長…」
「俺の隊の一部には臨時の長い休暇を出す予定だ、その隊員たちは…わかるよな?」
「はい!全力で誰にも見られないところで休みます!」
隊員たちは全員真面目な顔で敬礼してくれているので俺の意思は伝わったはずだ。俺達スカベンジズは表立って前線には有事の時を除いて行けない。
シェルター防衛用の人材、物品、前線で必要な銃や弾、パワーアーマー等の装備の持ち出し。そこにかかる金の高さ。そして失敗した時の損失のデカさ。
それらを考慮して上が許可を中々出してくれないのだ。しがらみの多さが俺達の弱点なのかもしれない。
しかし無策で俺の部下たちを送り出すわけにはいかないのですぐに前線天と言うわけにもいかない…まずどこから着手すべきか…俺の情報端末が鳴った。
『いい人材を紹介してやろう』
俺が嫌いでどこまでも見透かしていて…しかしあの圧倒的強さに魅せられた、あの極悪幼女からの連絡だった。
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