30.シェルターに喧嘩を売ってみよう その2

【エランダシェルター検問所職員兼スカベンジズ実働隊員 リビル】


今日もウォーカー共がたくさんのゴミクズをシェルターに売りに来る。外からのゴミも色々と生活の役に立つものの材料になるので格安で買い取っているのがここだ。そんなもん大量に集めたって俺らの飯の1食分にもなりはしないがな。


あとはシェルター内に入るウォーカーのボディーチェックや消毒やらも仕事だ。外の変なバイキンや武器を持ち込まれたら困るしな。正直俺は中に入れるのは反対なんだが、シェルターの中の住民が外について一切触れないのはなんかマズイらしい。ずっと触れっぱなしの俺にはわからん。


今日はそんなゴミ拾いの中に異質な奴らが来た。1人はどう見ても高齢。車椅子に腰をかけ力なく手をアームサポートに載せている。年齢は80を超えているだろう。ウォーカーにしては長生きだな。


その後ろの、車イスを押している男はよく見るウォーカーな感じだ。ガードル製の武器を背中に背負っている。見た感じゴミは持ってないようだが…


訝しんで見ていると老人の方が口を開いた。


「あのぉ~、ワシらぁ〜、賞金兵器討伐したんじゃがぁ〜…賞金貰えんかのぉ?」

「…は?」


何言ってんだこのジジイは…

呆気に取られていると後ろの男が情報端末を差し出してきた。


「ほら、これが討伐ログだ」

「…少し待て」


普通のウォーカーの方が端末を差し出してきた。ウイルスチェックをかけてから備え付けの情報端末に差し込みログを確認する。


【ワンダリングイーター撃破ログ】


ワンダリングイーターは確かあのやたら滅多ら溶かしまくる生物兵器だったか…

もう少し確認してみる。


一応このデータは本物。ワンダリングイーターは実際に撃破されたのだろう。このデータは改ざんが普通の手段ではできないものだ。


ログをさらに確認してみると、一人が拳銃で足止めをし後ろの二人が高火力の武器を使い撃破したという。ありえないような情報が出てきた。拳銃で足止めって…


「ワシがぁ、拳銃を撃ってる人じゃあ…」

「俺が火力担当の一人だな。で、もう一人は匿名だからよろしく」


よろしくじゃねぇよ!こいつら討伐の入った端末データ拾っただけだろ!こんな奴らが賞金兵器なんて討伐できるわけがねぇ…とはいえ仕事は仕事なのできちんと処理をしなければいけない。


「はぁ……何かチーム名とかあったら教えろ」

「ウキウキぃ、フロントぉラインー、ウォーカー部でぇす」

「…ふざけてるのか?」

「ふざけてねぇよ、それが俺達のチーム名だ」


ふざけすぎたチーム名に思わず頭が沸騰しそうになる。ただからかいに来てる奴らじゃねぇのか?しかし情報端末自体は本物…くっそ!わけがわからねぇ。ダメだな。俺一人じゃ正常な判断ができてねぇ気がする


ウキウキ…ウキウキ…すぅ…


「はぁ…一旦俺が預かる。確認にそこそこ時間がかかるかもなので、待ち合い室で待っていてくれ」


「はーい」「…チッ」


老人の方が舌打ちしやがった…

ゴミ拾いウォーカー共のクセに…



俺は討伐ログの入った情報端末を抜き、同僚に仕事を変わってもらい部隊長の部屋をノックする。


「入れ」

「失礼します!あ!あなたは!」

「よう、ちょっと邪魔させてもらってるぜ?」


部隊長の部屋にはヴィクトールさんがいた。我々スカベンジズの中で最強と言われており、討伐した盗賊ウォーカーや各兵器の数はスカベンジズ全体を見てもダントツでスコアがトップだ。


俺のイライラは伝説の人に出会ったことで吹っ飛んだ。


「しかし、ヴィクトールさんがどうしてこんなところに…」

「ああ気にするな。ちょっとした用事だ。それよりも部隊長に何か用があるんじゃないか?」

「そうだぞ?寂しいじゃないか」

「はい!部隊長!賞金兵器を討伐したというウォーカーが現れたんですが、どうにも胡散臭くて…私個人で判断できなかったのでこちらに」

「ふむ…そのウォーカー共は待ち合い室か?」

「はい!待たせています」

「良い判断だ。じゃあ少し監視カメラで見せてもらおう…」


監視カメラを付けると待ち合い室でちゃんと2人のウォーカーが大人しく待っている風景が映った。


「……クソが」

「えっ?」


映像を見たヴィクトールさんから凄まじい圧を感じた。部隊長も思わず身を縮こませてしまっている。ヴィクトールさんが圧を解き笑顔になって話しかけてきた。


「お前名前は?」

「リビルです」

「そうか、リビル、運が良かったな。俺がいるこのタイミングにコイツが来て…あの年寄りの方はやべぇやつだぞ。あちこちのシェルターで問題を起こしてるクソジジイだ」

「あの、ヴィクトールさんは知ってるんですか?」

「知ってる。ヤツの名前は【ロウ】っていうやつだ。ブラックリストには載ってないが、要注意人物な?」

「は?あの歩けもしない爺さんが要注意人物?」

「アイツはあの見た目を利用して、シェルター職員に問題を起こさせるんだ。本当に自分がやったことを職員が信用してくれなかった!だから許さない…的にな?」

「はぁ…」

「その問題のせいでスカベンジズをクビになったり、最悪シェルター出禁になったやつまでいるくらいだ…」

「マジですか!」


シェルターを出禁ってどういうことだ…

いや、何故処罰させられるのがこちら側なんだ!俺が何を考えてるのかわかったのかヴィクトールさんが理由を話す。


「ログの内容が本当に事実だからだよ…恐らく今回の賞金兵器の話も事実だ…払ってやれ。問題を起こされるぞ…」

「あの老人が…って待ってください!あのログの戦闘をあの老人が…嘘ですよね…」

「ログは見てないからわからんが、バケモンみたいな拳銃使いがいたらそいつだ…あの見た目で実力はずば抜けてやがるんだよ…いや、俺が行こう。ログと賞金支払いの権限をくれ」

「は、はい…」


ヴィクトールさんはログの入った端末を持って部屋から出ていった…


「部隊長…完全に空気でしたね」

「ああ、まあ俺的にはあの人に任せられて楽だったからいいけどな…」

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