29.シェルターに喧嘩を売ってみよう その1

今日もアミューがGENESISを齧る音で俺は起きた…


ロウさんはその隣でカップフードルを食べている。


「おはよー!サイン」

「起きるのが遅いのう」

「……」


昨日あんな死んだような寝方していたくせにピンピンしてやがるなロウさんは…

いやあのまま家で死なれたらそれはそれで嫌だけど?


俺もまた鳥マヨ丼を取り出し「今日は私がそれ食べる!」カップフードルでいいや俺も…

さて、今日は何しようかな。


「ワシは今日、シェルターに賞金貰いに行ってくるつもりじゃがどうする?ついてくるか?」


…まるで俺の考えを読んだかのように…


「…そうだな、ついていくか」


昨日姉御達と話していた時に少し話題に上がってたな…まあ俺も行ったほうがマシになるだろうし…ああでも揉め事になるくらいならいっそ。


「別にシェルターに持ってかなくても姉御が賞金払ってくれるってよ?」

「知っとるわい。ワシだってあれが初めての賞金兵器撃破なわけないんじゃ。ワシはシェルターに住んでる連中に嫌がらせしたいだけじゃ」

「…悪質だなぁ」


そういう問題じゃなかった。シェルターに住んでる連中に嫌がらせしたいがために、わざわざ揉め事を起こしに行く気かこの爺さん…アミューの教育にも悪そうだからやめてください…っと俺は心の中で思った。


「イツボシシェルター行くの?」

「行きません!ってかアミューはシェルターに入れないんじゃないか…」

「ガーン!」


よくよく考えたら生物兵器をシェルターに連れ込んだら大混乱待ったなしだよ…問題があろうがなかろうが。うちの連中とは一瞬で打ち解けてたけど普通はそうは行かないからな?


「まあワシ達も普通に入ろうとするのは結構大変じゃがの。でも今日はシェルターの出入り口にある検問所までじゃし、他の人に姿見せなきゃ大丈夫じゃろ」

「そうだな、でどこのシェルターに行くんだ?」

「エランダシェルターじゃな」

「…くっそ遠いじゃねぇかよ」

「だってワシこの辺のシェルターじゃ顔バレしとるもん。ワシを知らないシェルターにちょっかいをかけるんじゃ」

「何したんだよ…」


この老人シェルター嫌いすぎだろ…

アミューがドン引きしてるぞ…


「うう、ハンバーグ…ハンバーグが私じゃ買いにいけない…」


違った別のことだった…


「大丈夫だ!俺が買ってきてやるから!な?今日は行かないけど今度絶対買ってきてやるから!」


アミューを慰めていたら服を後ろから引っ張られた。


「おいサイン、使わん拳銃ワシに寄越せ。昨日使った分を補充させろ」

「ああもう!好きなもん持ってけ!」


朝なのに俺はもうクタクタだよ…


とりあえず今日はシェルターに行って帰るだけ(願望)なので、俺はパワーアーマー以外はガードル製で固めたのみで念のための武器を除けばどこからどう見ても一般ウォーカーな見た目になった。


アミューは透明化してついてくるのでなしです。そんな顔をしても今回はなしです。






隠れ家から車で数時間移動しエランダシェルターの近くに到着した。ちなみに運転はロウさんだ。俺は姉御が車に積んでくれた【レッドセントリー】の銃座に座り続けたので腰が痛い…


さて、と…ってロウさんは何やってんだ?


「サイン!この車イスを押してくれ!」


車イスを組み立て、そこに座りなんか言い始めたぞ…


「なんでだよ…パワーアーマー着てれば普通に歩けるじゃねぇか」

「こういうのは形から入るんじゃ!見とれ!ワシの真の力を!」


そう言ってロウさんは全力で力を抜いた。するとシワがどんどん増えて筋肉も垂れてきて…ええっ…


「どうじゃ、これぞワシの必殺技!【年相応】じゃ!この姿で騙したシェルターの数は10を超える!」

「それを必殺技とか言うんじゃねぇ…」


しょーもねぇの必殺技作ってるんじゃねぇよ…早撃ちの方を必殺技にしてください。


「ロウ爺すごーい!擬態ってやつだね!」

「いやぁ、照れるのぉ。ああそうじゃアミューよ。この先何が起ころうと、何もしないで見ててほしいんじゃが大丈夫かの?この戦いの勝利条件はワシが負けることにあるんじゃ」

「わかった!でもいいの?殺されたりしない?」

「そこまでされたらワシも反撃するのじゃ」

「じゃあ見てる!」

「一応筋書きはこうじゃ…まず…」

「ふむふむ…」


嫌な作戦会議だな…まあ、俺もやめてほしいとは思うけど止めはしない。

別にこの群れ以外の、他の人間がどうなったって俺は気にしないし。

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