26.ハイガル戦地 脱出

【サイン視点】


アミューと協力しながら走り続け…

危険地帯からはだいぶ離れた。

普通ならここまで逃げれば大丈夫なはずなんだが…何か違和感を感じる。


アミューも気になるのかソワソワしてるのが握ってる手から伝わってくる。


結局戦ってる時以外は手を繋ぎっぱなしでしたね。


しかし俺達の車の方向からなんだよなこの違和感…

こう、肌がヒリついて何か腐ったような匂いが…

突然俺の身体が中に浮いた。


「ダメサイン、ここから肩車」

「あ、はい…重くないか?」

「よゆー」


アミューが肩車で俺を持ち上げた…

パワーアーマーを着てしかもジェネレーターを背負い、武器わんさか持ってる俺を…


俺の車の方から銃声が聞こえてきた。

誰かが戦ってる?


アミューが走る速度を上げる。すると遠くに見上げるようなデカさの生物兵器が見えてきた。アレは…


「ワンダリングイーターだな」

「ワンダリングイーター?」

「あの生物兵器の名前だ。全身から硫酸を垂れ流してあちこちを徘徊して溶かしまくるから賞金がかかってる生物兵器だぞ」

「ふーん、だからサインじゃ耐えられそうにない毒が満ちてるんだね」

「…」


マジかよ。ここ毒あるの?えっ?何も見えないけど…ってかアミューは大丈夫なのか?

俺が気づいてなさそうな雰囲気を察したのかアミューが教えてくれる。


「私の首の位置より頭を下げたら多分サインは死んじゃう」

「…とんでもねぇな。しかし銃声が聞こえるってことは誰かがアイツと戦ってるんだろうけど…ワンダリングイーター微動だにしないな」

「そうだね、動こうとはしてるけど動けないみたいだよ?」


俺の情報端末が鳴る。

姉御からメッセージだ。


『援護してやれ肩車される系主人公』


…もう姉御にツッコむのはやめよう。どうやら俺のプライベートはないらしい。


「アミュー、少し止まってくれ」

「?」


俺は肩車されたままジェネレーターの入ったカゴを…アミューが尻尾と片手を上手く使い丁寧に地面に置いてくれて、スイッチングライフルをバックに仕舞い、念の為持ってきたプラズマランチャーをいつでも抜ける位置に用意する。


今更だがカゴの形状は背中に当たる部分に網が無く、バックを背負ってる状態でも背中に背負えるようになっている。背中でバックに蓋をする感じだ。鍵屋が前に使ってた密封タイプはカゴがバックに合わせた形に変形する便利仕様なのでお高い。


「どうやらあそこで戦ってるのは俺達の群れの仲間みたいだ。助けに行くぞ」

「わかった!」


アミューが走るぅぅーーーーーー!?

早すぎだって!身体後ろに飛ぶ飛ぶ!

落ちたら俺死ぬんだけどぉーー!

死ぬ気で態勢を保たないとあああああ…


そして俺の車のところに到着した。

車の光学迷彩カバーと罠が外され、車本体が剥き出しなっている。その車の上でこの間動画で見たばっかりのカウボーイハットを被るお年寄りウォーカーがワンダリングイーターに向かって拳銃を撃ちまくっている。


「ロウさん!」

「ロウ!」


俺とアミューは素早く武器をワンダリングイーターに向ける。

俺はプラズマランチャー。前線のアンドロイド型の機械兵器が持っている巨大生物兵器に対抗するためのランチャーだ。残弾が2発しかないが足りるか?


アミューはお腹からヒュージガルガンを生成し向けている。反動に耐えるためか自身の筋肉を膨らませ、足を地面に突き刺し体を固定していた。


ロウさんがどういう方法で動きを止めているかわからないが今のうちに攻撃を開始する。


俺のプラズマランチャーは狙いを大きく外れ、ワンダリングイーターの右足を消し飛ばした…頭狙ったんだけどな…ワンダリングイーターはバランスを崩して倒れた。


狙いを調整して2発目を…2発目はロウさんの頭の上を飛んで虚空に消えた…


「………!……!…!……………!」


ロウさんが銃を撃ちまくりながら、俺に怒鳴ってる気がするが気のせいだろう。


その間、アミューが放ったヒュージガルガンの弾幕が頭に当たり続けた、ワンダリングイーターは倒れ動かなくなった。


さすがヒュージガルガン。凄い爆音と衝撃だったな。俺のエイムもブレるわけだよ。


「頑張って食べたかいがあって良かった!早速使うとは思わなかったけどこれ。弾300発くらい使ったよ?」

「ああ…良くやったぞ。さすがアミューだ」


アミューの腹から飛び出ていたヒュージガルガンがお腹に戻っていく。俺は使い切ったプラズマランチャーを捨てた。前線武器は使い捨て…リロードする方法はあるにはあるが、かなり弱体化してしまうのでみんな基本捨てる。


ロウさんが車の上で遭難者のように手を振っているが…一回ジェネレーターを拾いに戻ります。


「………!………………………!」


聞こえません。



ジェネレーターのカゴを拾い車に戻ってくるとロウさんが車の屋根の上で腕組みしながら待っていた。


「やあロウさん、お久しぶり」

「やあじゃないわい!お前ワシを殺す気か?ワシのただでさえ少ない毛がプラズマでチリチリ言っとったぞ!」

「俺だって反省してるよ。最後のはちょっと焦った」

「うわぁロウだぁ。よろしくね!」

「…ワシ自己紹介したことあったっけ?」

「ああ、例のあの動画をアミューに見せたんだよ」

「アレか…ワシもう何やったか覚えてないんじゃよな…」


そりゃあんだけ(Part550)作れば忘れるだろうよ!


とりあえずこの毒?の場所から抜けるために荷物を車に乗せ、アミューに車を運転してもらい。俺とロウさんは屋根に乗ったまま移動した。…アミューは運転もできるんだなぁ?しかも安全運転だ。


「ロウはすごい強いんだね!あのデッカイやつ一歩も動けてなかったよ?」

「そうじゃよ?ワシすごい強いんじゃ…火力が足りなくて危なかったがの…マジで疲れたわい」

「どうやって足止めしてたんだ?そんな拳銃じゃダメージ入らんだろ…」

「攻撃の予備動作を見て関節の隙間に弾丸を埋め込んでたんじゃよ。前線武器の弾丸は硬いからの。それが邪魔してやつは動けなくなっとったんじゃ…しかし再生持ちはダルいの。体内の弾が排出され続けるせいでジリ貧じゃったわい」


予備動作って何かしてたのかアイツ…俺には全然わからんかったが?あと関節に弾撃ち込み続けるって何?俺にも少しそのエイム力分けてくださーい。


「サインにもエイム力があったらロウの頭の毛がチリチリしなくて済んだかもね!」

「…だろうな」

「お前はもう少し射撃を練習しろと何回も言っとるんじゃがのう…」


ロウさんがアミューの方をチラチラ見始めた…


「あの?アミュー…?ワシちょっと…呼び捨てで呼ばれるのは慣れておらんでの?できれば何か付けてくれんか?」


ロウさんがなんか言い出した…

そりゃうちの群れで一番ご高齢だし、みんなから基本ロウさんやジジイって呼ばれてるから呼び捨てが気になるのはわかる。


でも聞き方がアミューに気を遣ってるのが地味におもろい。


「んーとね!じゃあロウ爺!」

「…すぅ〜………………もう一回頼む」

「ロウ爺!」

「…………この歳になって孫ができたわい」

「ちょっと待てコラ」


うちの娘を勝手に孫にしないでください。

その家系図になると、俺のお父さんがロウさんになってしまうじゃないか。

ちなみにロウさんは結婚してないし女遊びをしてたという話も聞いてないので子供はいないはずだ。


「ロウ爺は拳銃しか武器は使わないの?」

「そうじゃよ?ワシは昔からこのスタイルじゃ」


ロウさんがヒラヒラしたマントの裏を見せると拳銃がビッシリくっついてるのが見えた…動きにくそうだな。


「さっきの戦いでだいぶ減ったのう…補充せにゃいかんなこりゃ。賞金貰っても赤字じゃわい…」

「ありがとうねロウ爺!私達の車を守ってくれて!」

「そうだった…お礼言い忘れてたわ。ありがとな」

「いいんじゃよ。姉御の指示もあったしの。過保護じゃと思っとったんじゃが、まさかあんなのが来るとは思わなかったわい」


そうだな。マジで姉御様々。俺達だけじゃ多分無理だったわ。俺のプラズマランチャーが一発も当たらないだろうし、アミューも体を固定して攻撃に集中することもできなかっただろう。


「姉御はたまに予知能力でもあるんじゃないかと思う采配するよな」

「性格の悪い采配じゃがのう…いつも頑張ればギリギリ何とかなるラインじゃ」

「姉御って凄いんだね!どんな人なんだろ?」


そのままダベりながら俺達は帰った…

あの?ロウさん?俺の隠れ家まで付いてくる気でらっしゃる?

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