25.ハイガル戦地 サインの戦闘
【サイン視点】
アミューが持ち帰るジェネレーターをパッケージングしてくれたのはいいが、それでも生物兵器達がワラワラ集まってくる。やはり外にエネルギーが漏れ出るのを完全に遮断とはいかないのだろう。
肉壁を盾に突進してくるチャージャー、壁を走り噛みついて酸を注入してくるハイドスパイダー、前線武器を身体から生やした…何かの物体?
とりあえずなんでも来るのでとにかく銃を撃ちまくりながら進んでいるので、当然機械兵器達も襲ってくる。
「ニン!」
ニンジャマスターの登場だ。印を結び始める。
さっきはアミューが一瞬で倒したが、俺は別にアレに勝てないわけではない。印を結んでいるニンジャマスターの胴のラインに高さを合わせて左右2m離れた位置をスウィッチングライフルで射撃する。
すると後ろに立ってる透明だったニンジャマスターが姿を現し倒れた。
ニンジャマスターの印を結んでいる本体を攻撃するとすぐに襲ってくるが、後ろの透明の、瞬間移動再現用の個体を攻撃しても反撃はされない。
後はまだ印を結んでいるニンジャマスターの足に攻撃を加え機動力を削ぎ、反撃も近寄らせないように立ち回り、丁寧に立ち回りながら攻撃し続ければおしまいだ。
「サインって…意外と強いんだね」
「強いっていうか、知ってるってだけなんだけどな…」
こういう知識のあるなしの差はとにかく大きい。知っていれば対処方法も用意できる。…まあ大体の人物が知っていてもミスって死んでしまうので知っていても実践は難しいのだが…
っておい!今【意外と】って付けたな!
スルーするとこだったぞ!
移動していたら今度はガンマンマスターが出てきた。
ガンマンマスターは最初は必ず数発は眉間を狙って射撃してくるので電磁バリアを眉間付近一点集中で厚くし、そこを撃たれてる間に弾薬を叩き込み撃破。
くそ、機械兵器の武器を回収してる余裕がないなこれだと…
アミューは一回俺が機械兵器を倒すのを見て覚えたのか、俺と同じ方法で機械兵器を撃破している。俺とは違い射撃に無駄がないので弾の消費が最低限だ。
俺達が影でバックから補給品を出し弾薬等を補充していると、他の人間達から声をかけられた。
「大丈夫かぁ〜?手伝ったほうがいいか?」
「いらない」
経験上こういう時に寄ってくる人間は良くない。手伝うと見せかけて後ろからズドン。戦利品をパクっちゃおうという連中が多いので拒否するのが当たり前だ。
だからか案の定諦めてくれない。
「そんなこと言わずに…さぁ?」
「こっちに来たら攻撃する」
「いやいや、一人じゃ無理でしょうよ?」
…相手は10人か?
俺が一人でいると思ってるのならそりゃ絶好なカモだと思うよ。
「アミュー敵だ。やるぞ、姿も見せてけ」
「うん」
俺達が飛び出すと生物兵器のアミューの姿を見て一瞬怯んだのか敵が固まった。その固まった隙に俺達はさっき補充した弾丸を敵に叩き込む。
3人は防御に成功してたが、7人死んだ。
襲撃されすぎて俺も少しイライラしていたのかもしれない。
人を殺す基準のラインが下がっている気がする。
「お、おいおい、マジで撃つやつがあるか!しかもなんだそいつは…」
巨大な斧を持ってるやつがなんか言ってる…ってああ、行きに見たやつか。仲間の死を一切気にした素振りのないやつだった。
「知るか。無駄に人に絡んだやつが悪い。この場所、前線で冗談が通じると思っているのか?いや、俺が攻撃するを冗談と思ったのか?冗談なわけないだろ」
「…」
もう戦うしかないと判断した相手も武器を構え、バリアを前方に集中させ…
「ん?」
「は?」
斧を持ったやつの腹から剣が生えた。
俺達に殺された敵の仲間が血だらけになったまま動き、背後から攻撃したようだ。これは…
鍵屋の得意技パワーアーマー乗っ取り?
「仲間を大切にしないからそうなる」
「ゴハッ…ふん!」
斧持ちは斧を後ろに振り血まみれの仲間を両断した。アミューがやったのか?そういえば鍵屋の端末食べさせてもらってたっけな…
死んだ仲間達からの急襲は斧持ちに負傷を与え、完全に無警戒だった2人は心臓を貫かれ倒れた。膝をついた斧持ちが苦痛に満ちた顔でこちらを見る。
「何…しやがったんだ…」
「教えるわけないだろ?」
そのまま俺は斧持ちも撃ち殺した。
アミューもハイライトの消えた瞳で死んだ死体を見下ろしている。もしかして透明の間もずっとその目だったのか?そんなつまらなそうな顔を…
ああ、ダメだ。ダメダメだ。こんな探索は楽しくない。俺が欲しいだけのものを拾って、アミューに頼って人を殺す…アミューが楽しめる要素が何も無い。アミューには笑っていてほしいのにこんな目をさせてしまって。俺は深呼吸してからアミューの方を見て…
「すまん」
「?なんで謝るの?」
アミューがハイライトの消えた瞳のまま首をかしげこちらを見る。かなり怖いがここで目を逸らすわけにはいかない。
「つまらん探索をさせちまったことだ。こんなのは俺が、俺達がしたい探索じゃないよな?」
「…違うの…私が…サインの…パワーアーマーを壊しちゃったから悪いの…。だから謝るのは私…ごめんなさい」
アミューの目からまた涙が出てきて拳を握り締めている。
…そっち?あれを気にしてたのか!ちゃんと話を聞いてあげたら良かったですねまる。少し話の方向を修正しよう。アミューの頭を撫でてあげながらフォローする。
「いいんだよアミューそんなことは。パワーアーマーなんて家にまだあるんだ。それにまた作ればいい。そのための探索だ。今度はアミューが全力を出しても壊れないパワーアーマーを一緒に作ろう…な?」
「うん…うん!一緒に作る!」
アミューは一応は元気になったようだ。
目にいつもの光が戻った。
…でも一応聞いておこう。
「あの…俺がこの人間たちを殺す判断は間違ってたと思うか?」
「いいんじゃない?サインが敵だと言ったら敵だよ」
…俺も迂闊な行動や発言は控えなければ、本当に賞金首になってしまいそうだ。
【スカベンジズ指導教本】
巻頭より抜粋
諸君らは外の世界に出て仕事をすることになるだろう。そしてもちろん外にも人間はいるが基本的に関わることはやめておくことだ。外の人間は道徳心が欠如しているものが多い。そのため平気で人を騙し、自分の機嫌が悪いからと殺しにかかってくる輩もいる。なので外で活動する際はチームメンバーをきちんと信用し協力することが大事である。外にはシェルターの中と違って法律が存在しないのだから。
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