17.ミドリノシェルター跡地 帰宅

【サイン視点】


ドクターが落ち着いたので話を戻すことにした。元マリアンヌさんもまたドクターをお姫様抱っこしている。


「ふへへ、アミューさんに会えて良かったです私」

「うんうん、仲間の役に立てたなら私も嬉しいよ」


ドクターとアミュー握手し手をブンブン振っている。


「…ねぇ、サイン?少し気になったことがあるんだけどいいかしら…」

「なんだ?」


ミツガレが不安そうな顔をしている。


「マリアンヌさん?が意思疎通できるってことは…あのドクターの後ろの…肉人形達…みんな自分の意思があるってこと?」

「…」


…どうなんだろうな。あの肉人形の作り方は知らないが人間がベースだろうしドクター自身が殺した元人間もいるだろうし…ミツガレの不安が理解できた。後ろから刺されそうだよな。


「んー、たぶん意思があるのはマリアンヌだけだと思うよ!声聞こえないもん。マリアンヌは超強いからきっと意思が残せたんだと思うよ」


アミューにこちらの会話が聞こえていたようで答えてくれた。


「それなら、安心?なのかしら…安心ってなんなんだろうとは少し思うけど…そういえばその…先輩はマリアンヌさんが強いっていうけどどれくらい強いの?」

「私が本気を出しても多分マリアンヌには勝てないかなぁ。」

「ふへへ、マリアンヌは前線で自らも戦って修行してましたからね。私を守るために」

「ちょっと…私には想像できないかな?」


マジかよマリアンヌさん、アミューよりも強かったのか…でもそれだけ強くても賞金兵器【ベルゼルガ】に出会ってしまい、ドクターを逃がす時間稼ぎをして死んでしまったんだよな。


「ふへへ、では、私もいい加減仕事に戻りましょう。時間があまりないですからね。ああ、サインさんとアミューさんには姉御から報酬で2人乗りの武装車のプレゼントがありますよ?ちゃんとアミューさんも乗れるように背もたれも取ってあります」


ドクターの肉人形の一人が車に乗ってこっちに来た。

姉御太っ腹じゃないか!車なんて何年ぶりだよ!しかも後ろに取り付けてある武器、前線機械兵器の【レッドセントリー】じゃないか!前線の人形機械兵器が使う機関銃でターゲットを自動的に狙ってくれるので車で走りながらの射撃も安定して行える!さらにシェルターで手に入る弾丸も撃てるように改造されているじゃないか!


「凄いな、凄い報酬だよ。お礼をちゃんとしないとな」

「すごーい!私の尻尾を置く場所がある!」

「ふへへ、ついでにあなたの隠れ家までの安全なルートも用意されてます。ここから車ですぐに帰れますよ?」


至れり尽くせりかよ!


「ふ、ふーん、私にも何か報酬があったりするのかしらねー?」


ミツガレが羨ましそうにこちらを見ている。

そりゃ羨ましいだろうな。

もし鍵屋がこれを貰ってるのを見たら俺は羨ましずきて血涙を流す自信がある。


「ふへへ、あなたはまず姉御と直接お話をしてかららしいです。そして鍵屋さんの報酬は…私と働いてからですね」

「そうね、まだ私はその姉御さん?を知らなかったわ…」

「姉御に(さん)付けはいらねぇぞ。そっちの方が怒る」

「わかったわ」

「…はい?」


そうだな。一応先に姉御にあいさつはしといた方がいいと思う。

そして鍵屋は頑張れ…顔が(∵)になってるぞ。


「ふへへ、あなたがいないと工場の分解に時間がかかりすぎてしまいますからね、大丈夫です。2日間寝ないくらいじゃ人は死にませんよ」

「…」


こういう時は帰れる時に帰った方がいいというのでさっさと帰ろうっと。


「じゃあ、俺たちは帰るか」

「そうだね!缶詰たくさん!」

「ああ、私の持ってきた缶詰もあげるわ先輩。車で帰るならもう一つくらいカゴは乗るでしょ。」

「いいの?後輩」

「いいわよ、私も鍵屋と一緒に残るつもりだしもう一回取ってくるわ。先輩防護服破けちゃったからもう一回あそこを通るのは嫌でしょうからね」


確かに、荷物いっぱいのカゴが乗るスペースが後ろに3つあるので追加でカゴを1つ分置けるし、アミューも…我慢して1回なら一緒消毒通路を通ってくれるかもだけどその手間も省けるなら楽でいい。鍵屋がミツガレの手を握ってキラキラした目を向けている。


「手伝ってくれるんですかミツガレさん!」

「見てるだけに決まってるじゃない。面白そうですもの」


鍵屋…強く生きてください。


「ふへへ、あと姉御がアミューさんの情報をまとめ終わったらしいので仲間内に共有してくれてますよ。もちろん機密のチャンネルに。なのでアミューさんがもし外を一人で歩いていても私たちの仲間に攻撃されることはないでしょう。もし攻撃されても私が許しませんから」


「お、おう…さっそくアミューと仲良くなったようで何よりだぜドクター」

「ふへへ、ズッ友です」

「私もズッ友ー」

「…いつの時代の言葉よ」


アミューが俺たちの仲間として馴染みまくってきてる件。


「じゃあ先に帰るわ、またどこかで。ああミツガレ、俺は結構夜中にウキウキ♪フロントラインウォーカー部の通話チャンネルでダベってるからそこでも話せるぞ?鍵屋も常連だ」

「僕はしばらく行けそうにないですけどね」

「ほんっとに気の抜ける名前よねこの群れは…」

「またねー!」


俺とアミューは車に乗り込みミドリノシェルター跡地から家に向かう。ナビにはすでに経路が入力されていてもう自動運転モードになっていた。マジで帰るだけやん。


車のスタートボタンを押してエンジンを起動、ハンドルを一応軽く握っておき、車を発進させた。

道の左右にはドクターの肉人形達がマンティス種を近寄らせないように配置されている。


「ドクター!凄い戦力!どの人形もマリアンヌより弱いけどそれでも強いよみんな!」

「…姉御のお気に入りの一人だからな」


ドクターの肉人形ってそんなに強かったんだな…戦うところを見たこと無いから知らなかったよ俺は。

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