9.ミドリノシェルター跡地 突入

【サイン視点】


翌朝

「ふぅ、何事もなく朝を迎えられて良かったですね」

「ああ、寝床がしっかりしすぎてて俺は完全にぐっすり寝ちまったぞ…」

「サインの家より寝やすかった」

「……」


鍵屋からの視線が痛い…しょうがないだろ!

俺の家の敷き布団は前に盗賊ウォーカー共の襲撃の時に塵になったわ!


「じゃあ地上に出る前に、この元シェルターの現状を教えますね。一応あなた達が来る前に調べましたので」

「頼むわ」

「今このミドリノシェルターは生物兵器マンティス種の繁殖場と化しています。色んなマンティス種が目白押しです」

「あまり嬉しくない目白押しだな」

「マンティスってあの手が鎌になってる生き物だよね?」

「そうですよ。まあ大きさはサインの身長より少し大きいくらいですが鎌を振られたらサインなんて一瞬で真っ二つですね」

「なんで俺指定なんだ。誰でも真っ二つだろ」


コイツ昨日部に俺がバラしたの根に持ってるんじゃないだろうなぁ。いや別にみんな言わないだけで知ってるからなお前の秘密は!


「私なら多分耐えれるよ!ほら【硬質化】!」


アミューの身体がさらに鱗で覆われてく。頭まで…まるでヘルメットを被ってみるみたいだ。


「おー、ダイナロイドの硬質化。まさかこんな近くで見れるとは。最前線のダイナロイド達はみんなその状態で敵に突撃していくそうですよ?確かにこれならマンティスの鎌なんて余裕で弾けるでしょう。最前線の武器も弾けるんですし」

「確かにそうだな」


武器は最前線レベルとそれ以外とでは質が格段に違う。前にアミューがスカベンジズを射殺した時に使った強化散弾銃も一応前線武器だが、ダイナロイド達が戦ってるような場所ではきっと紙鉄砲レベルなんだろうな…俺もいつかは拾ってみたいものだ。


「なら先頭はアミューさんにお願いしましょう。マンティス種は耳が聞こえないので音を立ててもバレないんですが、動くモノに対して問答無用に鎌を振るので人間だけだとどうしても移動速度が制限されますが、アミューさんならだい…」


「だいじょばないから俺が前に行く」

「えっ?私は前でもいいよ?」

「娘が斬られてるのを眺めていられるほど俺の心臓は強くない」

「もう完全にお父さん気分じゃないですか…」


アミューの鱗なら大丈夫かもしれないが、万が一のこともある。やはり俺が前に行くべきだろう。でもやっぱり怖いなぁ〜


「私も付いてくだけじゃなくて前歩きたい」

「しょうがない、アミューがそういうなら頼んだぞ!」

「…サインさん以前よりもだいぶ面白くなりましたねぇ〜」


というわけでアミューが先頭、真ん中に鍵屋、後衛が俺。これでミドリノシェルターに突入だ。


「…鍵屋のパワーアーマーなんか面白い」

「その頭に周りを浮いてるやつは意味あるのか?」

「意味はもちろんありますよ。ちなみにこれは大昔にUFOって呼ばれてた乗り物らしいです」

「昔はそんな乗り物もあったのか」

「私の知識にもある。確かうちゅーじんって人達が乗ってたらしい」

「…アミューって産まれたばかりなのに妙に色々知ってるよな」

「?殻を食べたときに色んな知識が頭に入ってくるんだよ」

「!」


たった今卵生の生物兵器達の秘密を垣間見てしまった…


「…サインさん?この情報はちゃんと扱わないとダメですよ?僕は聞かなかったことにしておきますのでサインさんに扱いはお任せです」


ソッコーで逃げた鍵屋さんは許さん。


「じゃあそろそろ行きましょう…あっ、ミドリノシェルターに何を目的に来たか聞くの忘れてました。何狙いですか?」

「金目のもんだ」

「へぇー、また珍しい。サインさんは武器オタクだからそっちかと思ってました」

「アミューがな。イツボシシェルターの飯が食べたいんだとよ。だから金」

「私、これで毎日3食イツボシ!」

「…それは無理だと思いますよ〜」


イツボシ毎日3食か。そして強い武器を食す…うちの娘はどうやら金がかかりまくるらしい。


「それならテキトーにお店跡を探していきましょう。銀行とか見つかったらいいですね」

「ああ、そう思ってちゃんと金属カッターも持ってきた」

「僕も開けられるやつは開けてあげますよ」

「鍵屋、いいやつ!」

「鍵屋はいいのかよ俺たちに付き合ったまんまで」

「僕の目的のモノはついていきながら探しますよ。では行きましょうか」


簡易拠点の扉を開け外に出る。

外を歩き回ってる機械兵器達はまだ稼働していた。センサーはちゃんと戻っているようであちこちに赤い線が見える。


地上に出るルートは機械兵器達の順路から逸れているのでスルーしてそのまま抜けていった。

地上に出る出口は瓦礫で埋まってる…が隅の方に鍵屋が外に出たのかパワーアーマー込みで人一人通れる穴ができていた。


ここからアミューが前に出る。

アミューは俺から見て学んだハンドサインをキビキビして俺たちに指示を出す。


(…すまんアミュー、それだと鍵屋がわからないんだ…)


鍵屋がこちらを見てきた。顔はクッソ笑いを堪えてると言った感じだ…


(よし、こいつはわからなくても問題なさそうだな)


外に出ると建物がズラッと見えた。どれもが壊れかけで今にも崩れそうなものばかり。シェルターの天井は穴だらけで白い点がらたくさん付いている。あれが恐らくマンティス種の卵…

地面は地面で人骨だらけだ。地下鉄に乗り込もうとして逃げ遅れて犠牲になった人達なんだろう。


(うわぁ、これは悲惨だな…おっ、早速マンティス種が5体)


俺よりも少し大きいマンティスが壊れた建物の隙間から出てきた。


(あれは倒すべきか…)


鍵屋も同じ考えなのか武器を構えた。

鍵屋の武器はガードル製のショットガンだ。

威力はショットガンにしては低めだが壊れにくく、ちゃんと近距離で撃てばマンティス種の頑丈な体にも穴を開けられる。やはり武器は前線武器を除けばガードル製が安定だよな!


アミューも俺たちの動きを見て武器を構えた。

そしてマンティスに向かって走る。

マンティス達もこちら認識したのか羽を羽ばたかせてこちらに突っ込んできた。


アミューがマンティスの一体をパイルバンカーで頭を消し去り、その後尻尾を振ってもう一体の胴体を吹き飛ばす。鍵屋もマンティスの鎌をギリギリで避けてショットガンを急所の首を撃って倒す。俺のガードル製ライフルだと倒しきれないので残り二体のマンティス達の羽を狙って機動力を削いでおくことにした。


一体羽を撃たれてバランスを崩したマンティスはアミューのストンピングで頭を潰され、もう一体も鍵屋が一体目と同じように丁寧に撃破していた。


(…アミューつえぇ〜)


やはりダイナロイド、人間とは違うゴリ押しは後ろから見ているととても気持ちいいものだ。

鍵屋もアミューをキラキラした目で見ている。

アミューはそんな俺たちの視線に気づいたのかドヤ顔をしている可愛い。


俺たちはそのままミドリノシェルターをアミューに先導してもらいながら先に進んでいく…

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