2.全然そんなことない男

(ダイナロイドぉーーーー!?あー死んだわ、俺の命日今日だったんだぁ!びっくりしたよ!チビってるわ!むしろ気づいてたって何?もしかしてずっとついてきてたの!?俺が気づいてると思って?)


男は冷静さを保ってるように見えたが内心はとんでもないことになってた。

(どうりで俺が集めた物資が消えてるわけだよチクショウ、コイツが全部食べてたのか。前線に行くのも大変なのに俺の成果が...いや?助けてくれたしもしかして?)

「…?」


(やべ、何か話さないと本当に命日になってしまう!)




「ふぅ、それにしても今日はいい天気だな」

「?曇ってるけど」

本日の空は大気汚染の影響で濁った雲で覆われている。


(何かにも程があるだろ俺!しっかりしろ俺!)


「えっと、食うか?」

「少しだけ食べる」


ダイナロイドは俺が渡したミニガンヘッドの頭をボリボリ食べ始めた。


(もしかして…ダイナロイドの餌付けに成功したのか俺!あの殺意マシマシなダイナロイドを…アイツら食べることと殺すことしか考えられないはずなんだが…どういうこと?)


ダイナロイドはハクア博士が太古の昔に存在されていたとされる恐竜の遺伝子を使った生物兵器であり、獰猛で頑丈。一般的な人間では基本的に手も足も出ない強さもある。しかし強いとはいえ、最前線の激戦区の方まで行けばダイナロイドは群れでいるし、それを蹴散らす兵器もたくさんだから最強ではない。


(そんなダイナロイドが会話できるし大人し…うん、まあ敵には容赦ないところは生物兵器なんだなぁと思うけど…これは【ウキウキ♪フロントラインウォーカー部】で自慢できるのでは?やべぇ、いや、冷静になれ俺。まだまだピンチなのには変わりないんだ…まだミニガンヘッド食べてるし食べ終わったら次は俺かも…)


「食べ終わった!」

・ミニガンヘッド「残弾:23」

(食べ終わったっちゃったかぁ〜)


「そうか、美味かったか?」

「うん」

「えっと…家来る?」

「うん」


(おっしゃあ!これ餌付け大成功だろ!絶対そうだ!)




「じゃあついてこい」

「?」

「?」

(あれ?ついてこないのか?)


「手のやつ…ハンドサインはしないの?」

「!!」


(あっ…ああああ!!俺の…趣味でやってるハンドサイン見てたのか…)

この男、ハンドサインなんとなくかっこいいと思い、部隊を引率してるつもりで虚空に向かってハンドサインをぶん回してるだけの痛い人であった。


「ああ、そうだったな。忘れてたよ。家に帰るまでが探索だ!気を引き締めていくぞ!」

「うん」

目の前のダイナロイドの姿が消えていった。

(おお…消えてくところ初めて見たな…まるで幽霊が成仏していくみたいで怖いな…)


完全に消えたところで普段やっているハンドサインをしながら移動を再開する。


帰りは丁寧に索敵しながら帰ったので他の人間に出会うことなく男の隠れ家に到着した。そもそも急いで索敵を疎かにしてでも戻ったのは運んだ物資が消えてることの異常事態が発生したためである。原因はわかったのでもう慌てる必要もない。


(そうだ、名前…がないと不便だな)

歩きながら男は自己紹介を始める。


「俺の名前は…サインだ」

「…それが名前なの?変な名前」

「まあな、というか俺の所属してるグループ…じゃないな。群れはな?リーダーが個別に用意したコードネームを名乗らなきゃいけないルールがあるんだ。その名前がサインなんだ…」

「へぇ、ハンドサインたくさんしてるから?」

「…多分な」


うちのリーダーはどこから情報を集めてるのかわからないが、ありとあらゆることを知っている。俺のささやかな妄想遊びまで…コードネームを決められたときに、心臓がヒュってしたわ…


「群れ…私はサインの群れの一人になったわけだしつまり私の群れでもあるよね、私も何か名前がもらえる?」

「!?」

(や、やったぁ!これは言質取ったってやつでしょ!ダイナロイドが仲間になった▼テラヤバス!おとと、彼女の気が変わらないうちに…)

実質仲間になった発言を聞き男の頭の中はテンション爆上がりになった。


「えっと、俺が名前付けてもいいか?」

「いいよ」

「ありがとう…じゃあ…」


(くぅ〜、やっぱりペット…は失礼かもだけど名前は自分で付けてあげたいよな!名前名前…ミニガンヘッド食べてる姿が地味に可愛かったし…)


「名前は【アミュー】でどうだ?」

「それでいいけど、どうしてその名前になったのか教えて?」

「ミニガンヘッドを食べてる姿がえっと…強そうだったから」

「強そう!なら完ぺき!よろしくサイン!」

「ああ、よろしくな、アミュー」

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