墓荒らしの禊
ごんた
第 話 墓荒らしが生まれた日
私は静寂と暗闇の中で、微睡みながらじっとしていた。
覚醒し切らない頭はぼんやりと周囲を窺うが光も音もない状況では世界では起きていても仕方がない、と私は思考を放棄して再び心地よい睡魔に身を委ねる。
そして意識が睡眠へと落ちるまで同じことを考えるのだ。
ここはどこで、こんな所に居る自分は何者なのか、いつからこの状態だったかと。
もう何度目かも分からないが、今回も意識が沈んで眠り落ちる筈だった。
どこか遠くから音が聞こえた気がして沈みかけた意識が再浮上する。
気のせいだろうかと目を閉じたまま様子を伺うと、私の耳はこちらに向かってくる数人の足音をしっかりと捉えた。
迷いなく進んできた足音の主達は私の近くで足を止め何やら話し始めた。
瞼の裏に優しい光がじんわりと染み込んでくるのを感じて私は薄目を開けてみる。
橙色の薄明かりに照らされた数人の影が私を取り囲んでいて、その周りにもウロウロと動き回る影が見えた。見える範囲で6人程だろうか。
途端に囲んでいた影達が騒がしくなりあちらこちらへと叫び始めた。それに合わせるように周囲の足音もドタドタと走り回っているようだ。
ずっと静かな暗闇に居た所為かそんな周りの様子が面白く感じてしまい、もっと見たいと瞼を持ち上げようとした。
しかし急激な強い睡魔が重りのように瞼にのしかかり、瞼は上がるどころかゆっくりと下がっていく。
せめて私に向かって呼びかけている人の顔だけでも見たい、とそちらに目を向けた。
その顔は白く、口の中はピンク色で、頭の上部には2つの三角の突起が見える。
個性的な髪型だなぁ…と呑気な感想を思い浮んで、そのまま意識が途絶えた。
自問ではなく他事を思いながら寝落ちたのは初めての事だった。
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