ヤンキー×学級委員=?

かえで

第1話 見てしまいました

「ねえねえ、愛理。愛理は好きな人いないの?」

「ううん、いないかなぁ」

「ええ~?私の彼氏、すっごいかっこよくてぇ」

「それは何回も聞いたよ」


私は笑いながら美緒を見る。

――ここは、緑川中学校の食堂。

長良川美緒ながらかわみおと一緒に、ご飯を食べている。

それにしても、美緒。彼氏の話ばっかするよね。どんな彼氏なんだろう、一回あってみたいなあ。


「――り。――いり。おおい、一ノ瀬愛理いちのせあいり!」

「は、はいっ!」


急に美緒に呼ばれてどきっ!


「はあ、よかった。急にぼーっとしだすからビックリしちゃった」

「ごめ~ん」


私はてへっと舌を出す。美緒はふっと笑ってこちらを見た。


「そろそろもどろっか」

「うん!」


今日は学級委員の仕事もないし、のびのびと遊べるね。

こうして私たちは、平和な日々を過ごしていたのだった。


そして帰り道。美緒と別れて一人で帰っていた。

ちょっと時間ピンチだな。

ちょっと急ぎ足にする私。

奥に細い路地が見える。私しか知らない(?)近道、見っけ!


私がそこを通ろうとしてそちらを見ると、背の高いいかにも不良~って感じの男の子が数人、立ってタバコを吸っていた。

中学…3年生くらいかな?うちの学校の校章つけてるから先輩だ。

って、そんなこと考えてる場合じゃない!


この人たち、ヤンキーだよね。

私、とんでもないところ見てしまった?

ヤンキーも私たちに気づいたらしい。

こっちに近づいてくる。


うっ……うわああああああ!


私は体育祭の短距離走より速く走った。

家に向かって、走る。走る。

ようやく家の門の前までついて後ろを向くと、ヤンキーは後ろに見えなかった。


はあっ、はあっ。

帰ってきたらすぐにお風呂に入る。

ふ~~、やっと落ち着けるね。まあ、先生とかにチクったりしなければ平穏に暮らせると思うんだけど。私の今年の抱負、平穏なんだから…。


そしてご飯を食べて、歯を磨いて、ベッドに寝転ぶ。

二階にいるお兄ちゃんが私の部屋にやってきた。


「おれ、彼女できた。お前も、彼氏つくれよ」


はあ?

彼女って、本当マジ?って、彼氏つくれよなんて言われても。

私、彼氏なんか作る気ないよ。自然の成り行きに任せる感じ。


「じゃ、おやすみ」

「おやすみ。今度彼女の子に合わせてね」

「…考えとく」


お兄ちゃんはふっとわらって二階に上がっていった。



おやすみなさい。私。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る