第4話 [内緒の話]

 私はミシェル=ロッソ。6歳になった私は田崎瑞穂過去世の記憶を取り戻していた。


 日本のH県の出身だった事、私は義兄あにに殺されて犯された事、そして私を愛してくれた裕くんの存在…裕くんはもう20歳を過ぎてる筈だ、今は大学に進んでいるのだろうか?それとも仕事をしているのだろうか?逢いたい、ひと目で良いから逢いたい。


 ミシェルとしての2度目の来日はそこまで嬉しいものでは無い、長年ガンをわずらっていたシェリーお婆さまが多臓器不全で亡くなられて、急遽来日したのだ。本来ならを探し出せるチャンスなのだが、子供6歳の身では自由に動けないのが歯がゆい。


「アンドレアス、マリー、ミシェル…よく来てくれたなぁ」


「母さんは?」


 お爺さまブルーノは酷く憔悴しょうすいしている、無理も無い。最愛の妻シェリー末期まつごを看取ったのだ、それは前世で瑞穂を見送ってくれた裕くんとダブって見えてしまう。


「シェリーは会場の奥でよ。ミシェル、お前も挨拶しておきなさい」


 私はうなずき、祖母に別れを告げに一輪の花を持って近づく。祖母の寝顔は痩せては居たが、瑞穂の時とは違い、天寿を全うした穏やかさがあった。アンドレアスパパは未だに信じられないという感情を押し殺し、マリーママは大粒の涙をこぼしている。私は両親の後ろで2人をそっとなぐさめる様に寄り添う祖母の姿が見えた。


「パパ、ママ。お婆さまが優しく笑って言ってるよ『ありがとう』って」


 両親は私を強く抱き締めて大泣きする、2人の目には私の姿が気丈で健気で泣くのを我慢している様に見えたのだろう。私は祖母に向かって


「お婆さま、お爺さまにも挨拶してあげて」


 私がそう語りかけると、祖母は私の頭をそっと撫でてから祖父のいるロビーに行った。


「ミシェル、我慢しなくて悲しい時は泣いていいのよ?」


 ママの私を労る言葉に


「本当にお婆さまが見えたの。お婆さまはね、人生を全うしたの、だから今はお婆さまがちゃん天国に行ける様に見送ってあげなきゃダメなの」


 と、そのまま答える。パパはありえないと言いかねない表情で私を見つめ、ママは私を抱き締め続けていた。その後、パパとママは祖父の代わりに参列してくれた方々に挨拶をして回り、私は祖父の隣で少しでも祖父の気を紛らわす為に座っていた。


「ありがとうミシェル」


「お婆さまはね、お爺さまに感謝してるよ。私、見えてるの」


 祖父は私の肩を抱き寄せてくれる、祖父は私の言葉を疑わずに聞いてくれるから好き。


「お爺さま、今だから言っていいですか?」


「何だね?」


 私は祖父に田崎瑞穂の記憶を持った生まれ変わりだとで説明した後、祖母の言いたかった事を代弁する、祖父は驚いてはいたが、涙を拭き、私に目の高さ視線を合わせて。


「ミシェル、今の話はミシェルと私の秘密にしよう」


「どうして?」


アンドレアスパパマリーママには刺激が強い。ミシェルが瑞穂さんというのは分かった、そうだなぁ…後10年、ミシェルが立派なレディになったら私の所日本に来なさい」


「ええ、約束よお爺さま!」

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