第10話 昼下がりのビールとお昼寝
久しぶりの徹夜仕事。翌日の朝10時に入稿しなければならない原稿があり、その日のうちに全て揃っていたのだが、最終チェックで大きなミスが見つかった。大幅な書き直しを決断し、徹夜で皆で手分けをして直したのだ。ミス自体は褒められたことではないが、部下に責任を押し付けても問題は解決しないので、こういう時こそ率先して問題解決にあたるのが自分の役割だと思っている。きっちり期限前に仕上げて、今日は早めの帰宅とした。
これまでだったら帰りの電車で寝てしまい乗り過ごしてしまうところだが、さすがに駅二つなのでそんなこともなく、少しふらふらになりながら家まで着いた。昔は徹夜明けでも普通に仕事してさらにその晩に飲んだりもしていたが、やはりこの歳になるとそんな無茶もできない。
家に入ると奈緒が一人でお昼ご飯を食べていた。
「あれ、どうしたの」
「ん、お前こそ。俺は昨日徹夜だったから帰って来たんだけど」
「あ、そうなんだ。私は耕太の塾の見学の為にお休みもらってたの」
ああ、そうだった。耕太くんに中学受験させたいとのことで、まだ4年生だけど翔太と同じところに入れたいって言ってたな。冷蔵庫からビールを取り出すと「私も」と言われたのでもう一本取り出し彼女に渡す。
「それで?どうだった?」
「うん、まあ耕太は翔太くんが行ってるから一緒に行くって決めてたみたいなんだけど、私も結構気に入った。もう手続きしてきちゃったよ。学校から直接翔太くんが連れて行ってくれるから今日から行くって言ってた」
便利な時代になったものだ。小学生ですらスマフォを持っていて、学校にいる間にもテキストで連絡が取れる。
「で、午後は?」
「特には決めてないけど、気が向けばお掃除するか、そうじゃなければ読書でもしようかなと。最近通勤中に本を読めなくなってちょっとストレス溜まってる(笑)」
「わかる。近くなったらなったで出来なくなることもある事がわかったよ。でも、何もないんだったら一緒にお昼寝する?」
「えー、ダメだよ。誰か帰って来ちゃうかもしれないし」
「んー、子ども達は塾と部活だし、そちらの旦那さんは仕事、菜穂子は今日はお華って言ってたよね」
「うん。だから今日は私がご飯の準備をすることになってる」
「だったら」
「えー、じゃあわかった。慎司さん、徹夜で疲れてるんだから、添い寝して寝かしつけてあげる」
ビールを飲み干し、二人で階段をあがった。部屋に入る時、奈緒が小さく「おじゃまします」と言い、そして「へー、こうなってるんだ」と呟いた。家の中はほとんどが共有スペースだがお互いの寝室だけは入らないことになっているのだ。
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