第六話『アフロブラザー』
「おっ?よーやく帰って来たわね。どう?掘り出し物あった?」
「へっへー。まあまあってとこね」
「おい……おいッ!!」
……何やらケビンが騒いでいる。よく見ると、荷物は全てケビンが持たされていた。それも大量に。
「何で俺が荷物持ちやってんだよ!!少しは持てよ、お前も!!」
「何?レディは
異議を申し立てるケビンだが、アルミラは悪びれない。力仕事は男性担当。この考えは古風と捉えるか、それとも今や世間は男女平等と捉えるか。難しい所だ。
何かと肝が
「かー……!!都合よく言い換えやがって……お前さ」
「何?」
「まさかとは思うが、たらし込み系のアレとかやってないよな?」
失礼千万なケビンの回答。だが昼間のバザールの値切り方を見るとそれも致し方ないか?だが、それを制したのはアルミラでも、ミカサでもなかった。その人物は、
「少年よ、
ケビンの頭に
長身で筋肉質。肌は色黒、サングラスに違和感のある着物の着流し。腰には刀を差し、何よりも特徴的なのは、
「何だアン……タ……。ええっ?」
「うわっ!!」
二人の目を引いたのは髪型。二人とも開いた口が塞がらない。
「アフロ……」
「アフロだね……」
そう。まごうこと無きアフロヘア。……初めて見た二人。だがここまでイレギュラーになると、逆にミスマッチ。
『アフロ侍だ!!』
「ん?そうだな。拙者はアフロ侍だ」
ブラザーソウルよろしく。和の心を履き違えた侍。だが、強さは十二分に伝わってくる。彼がミカサが招集した、
「ああ、紹介が遅れたわね。彼があなた達の監督役、侍のショウジローよ。ランクはB+ってとこね」
ランクもB+ともなると騎士団の筆頭を任されるほどの腕前を意味する。よく今回の
「……すみませんでした、俺はケビンって言います」
「私はアルミラ。それ……やっぱり本物ですか?」
二人の興味はもうアフロに首ったけ。まごうこと無き地毛。
「うむ。ん?気になるか?触っても構わんぞ?」
『……いや、結構です。それは』
形を崩してはならないという二人。自慢のアフロがそこまで食らいつかれなくて、少ししゅんとするショウジロー。
ともかく自己紹介は終わり、ミカサはこのハンバラ学生街周辺の地図を広げ、今回の
「場所はメネスの
ミカサは地図に赤いマーカーでシュッと丸を付ける。
「本来なら結界があって、
そこにはミカサも疑問があった。古来より運営されてる当『迷宮学園』その長い歴史の中で様々ないざこざがあったが、システム不備というのはあまり聞いたことがない。
かと言って、手の空いている生徒、教師、他は残念ながら見当たらない。まあ、三人の実力の程を知るミカサは、
「て、言っても小型の
もはやアフロ君で通るショウジロー。連日の
「よーし!!じゃあ、明日出発だ!!やるぞぉ!!」
気合が入っている。剣士は気負いするくらいなら、これくらいで丁度良い。だが、魔術師のアルミラは、
「熱血だねぇ……ま、足引っ張らないでよ?単細胞さん」
「お前と言う奴は、皮肉でこき下ろさないと満足せんのか?」
皮肉を言えるほどクールを徹底する。最大の火力を持つ魔術師というものは最後の要。分析能力が求められる。……アルミラのこれは行き過ぎている気もするが。
「こらこら、いい加減にしないか。チームワークの乱れは死に直結するぞ?進級したければ、考えを改めよ」
アフロ侍ショウジローは二人をなだめる。その姿は確かに余裕を持った先輩のそれだった。そして日が落ちると、ミカサが厨房の奥から、何やら異形のものを持ってきた。
「さ、とにかく夕食にしましょ。帰りが遅いと踏んでいたから、あらかじめ私が作っておいたわ。たくさんあるから、おかわりジャンジャンしてちょうだいな」
『…………え?……ミカサさんの……手料理?』
「そうよ。今日のは自信作だから。さ、食べて食べて」
「……い……いただきます」
お気づきだろうか。ミカサの料理の腕は壊滅的。かと言って、彼女に逆らい食を拒むのも地獄行き。もはや逃れる術はない。
その夜は異様なまでに静かに過ぎていった。それは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます