第36話 ー 新メンバー


とんがり帽子に丸メガネ、そして極めつけは身の丈ほどもある魔法の杖。


紫の長い髪の少女が、わずかに肩を強張らせて名乗った。


「ノワール……と申します。」


「よろしくね!!」


エリナがニッコニコで一歩踏み出して言い放つ。


初対面、しかもグイグイ詰めてくるテンション高い人……特有のその圧にノワールは一歩後ずさった。


「へっ!?よろしくお願い致します……。」


俺は苦笑いしながら言う。


「まぁまぁ、嬉しいのは分かるけど落ち着けよエリナ。」


「そ、そうね!!ごめんなさいね!!」


落ち着けと言ったのに、声が騒がしいんだよな。


私ーーノワールは初っ端から騒がしい2人を見ながら、これから上手くやっていけるかと心配になった。


私は陰キャだから。



冒険者ギルドの掲示板は、朝から人だかりだった。


油の匂い、金属の軋む音、ざわめき。


視線の先に、その依頼は貼られていた。


ーーーー


【依頼内容】

ルーベントダンジョン深層到達補助

【期間】三ヶ月以内

【報酬】金貨20枚

【依頼者】D級冒険者 エリナ・ヴァルス

※現パーティーメンバー:

D級冒険者 フジタカ


ーーーー


無謀。


最初に浮かんだ言葉はそれだった。


メンバーもD級、きっと同世代。


三ヶ月で深層——計画としては突飛すぎる。


「深層……。」


先日、自分で立てた誓いが喉もとに戻ってくる。


『いつか必ず、深層まで辿り着く。』


彼らと私、どちらも変わらないのではないか。


いや、彼らは既に深層到達の為に動き出している。


そう考えると、私の方が彼らより劣っているだろう。


先程まで無謀だの突飛もないだの考えていた自身を恥じる。


「っ」


行動してなければ、ないも等しい。


誓いを立てても、何の意味もない。


そして、気になるのはその報酬。


金額20枚……。


心臓が一拍、強く鳴った。


え、20枚?


魔法学校に卒業までのもう1年間通えるよね?


そう。


金額20枚が、まさに残り1年間の学費の金額であった。


ここで手を伸ばさなければ、また一年、何も変わらない。


私は迷わず依頼書を剥ぎ取って受付に待っていった。


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