500字以内短い物語

なつかわ

第1話 奪っても……いい

「奪って……いい?」

「えっ?」

なんの前ぶりもなく、自分の顔を近づけ、

まるで、朝のあいさつをするかのように、「奪っていい?」と私に訊いてきた。

だから、私は、そんな榊雷=幼馴染に向かって、

「昨日の残りのかぼちゃのコロッケならあるけど?」

私は、そう雷に言うと、コロッケを取りに冷蔵庫に向かって歩き……

「雷?」

冷蔵庫にコロッケを取りに行こうとした、私の右腕を雷が掴む。

「俺は、コロッケなんか欲しくない! 俺が欲しいのは……」

掴んだ右腕ごと、私を自分の方に引き寄せ、自分の唇を私の唇に重ねる。

_10秒後_

雷の唇が離れる。

上手く呼吸ができない。

「はぁはあ……はぁはぁ……はあはぁ」

私は、呼吸を確保する為に、雷の上着を掴む。

「雷……」

雷とは、産まれた時からの幼馴染で、家族同士も仲が良くて、本当の兄妹に一緒に育った。

そんな雷からの突然のキス。

私は、その意味が解らず、雷の顔を見る。

すると、まだ、呼吸が落ち着いていなのにまた雷が唇を重ねてきた。

_10秒後_

「俺は、お前が欲しい。幼馴染じゃあなくて、一人の女性として」

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