照姫伝説 —万葉風長歌—

Kay.Valentine

照姫伝説

東路(あずまじ)の その道の果て 


石神井の 豊島泰経(としまやすつね)


その娘 照姫様の


美しさ 匂いたつほど


城内に 想いを寄せし 

 

もののふの あまたありけり 


照姫も 或るもののふに 


恋せしが 思いは胸に


隠しつつ 時過ぎにけり


或る年の 弥生の月に 


攻め来たる 道灌共に 


豊島殿 虚しきことよ 


敗れ去り 哀れなるかな 


この をのこ 果てにけるなり 


照姫の その後の嘆き 


いかばかり お房(ぼう)に籠もり 


何も召さず 涙に暮るる 


その暮らし 哀れなるかな


そののちも 石神井城に 


道灌の 軍勢たちが


迫り来て  兵(つわもの)どもは 


命かけ 戦ひたるも 


敵軍は お城の中に 


なだれこみ あな、父君は 


腹を切り 何処よりかは 


分からねど 火の手の上り 


照姫は 敵(かたき)の手には 


かかるまじ 極楽浄土に 


行かむとて 西に向かひて 


手を合わせ 波に跳び込む


水屑(みくず)の哀れ

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