魏公不望蜀
河野 行成
魏公不望蜀(ぎこう、しょくをのぞまず)
魏公軍は
魏公、嘆じて曰く「人の
陽平の山上の諸営を攻めるもすぐには抜けず、士卒の
三日対峙し、魏公は嘆じて曰く「兵を動かし三十年、一朝にして人に与えんとは。
魏公、意気
夏侯淵と許褚はそれを信じず自ら見に行き、
張魯はいよいよ降るべしと思う。
されど
張魯、この進言を受けて
魏公は南鄭に入城して驚いた。張魯の治政についてである。民から
さて、漢中の隣は
主簿の
司馬懿曰く「劉備は
魏公、両主簿をじろりと
魏公
劉曄もまたこの機を逃すと劉備が勢力を延ばしますぞと諫言して曰く「司馬
魏公応えて曰く「士卒は遠路を踏破し労苦せり、宜しくこれを憐れむなり」
主公の言に反論もせず頓首して下がった両主簿、営舎へ戻ろうとすると、後ろから夏侯淵ら諸将に声を掛けられる。
夏侯淵問いて曰く「主公の言、「既に隴右を得て、復た蜀を望むや」とはどういう意味であろうか。或るものは、単に人の強欲を嘆いた言と言う。或るもの、此度の
居並ぶ徐晃・張郃が
司馬懿が劉曄に向かって曰く「主公の復た蜀を望むの言、
劉曄応えて曰く「左様、世祖が
夏侯淵は
請われた劉曄、世祖すなわち光武帝が己が祖先故に問われたかと、首を傾げ、思い出しながら曰く「勅に曰く「西城、上邽、両城、若し降らば、すなわち兵を率いて南の方、蜀の
徐晃が口を開いて曰く「なるほど、世祖が蜀を望んだ故、魏公自身はそうしないと」
司馬懿は首を傾げる。それを見て、張郃がその不審を問いて曰く「司馬主簿には、御異見ありや」
司馬懿は首を振り、答えて曰く「いや、世祖のその時の
振られた故に劉曄応えて曰く「ああ、確か「囂は文官にして、正しき行い、物の理に
司馬懿曰く「四十で、頭髪顎鬚は為に白し」と劉曄を見やり、夏侯淵らもつられる。
劉曄は自分の頭髪を窺われていることに気づいて曰く「我も世祖の血筋だが、若白髪は受け継がなかったようだ」
なるほどと諸将、光武帝が四十で若白髪を気にしていたと、司馬懿の
司馬懿も軽く頷いたが、思うところは違った。世祖は四十代で天下を
諸将が四十は若白髪かどうかを問答する間、司馬懿は横目で劉曄を観察する。司馬懿同様、蜀を攻めるが筋だと諫言するも、意見を頑なに押し付けようとはしない、そういう人物である。求められれば、その職務がそうするものであれば口に出すが、そうでない時は沈黙し、
司馬懿、己の姿と比べて見る。主公は
司馬懿、自身の営舎に戻り、再度考える。光武帝が既に隴を平らげと書いた時に、関東で
ここにおいて司馬懿は主公を思う。無欲な訳ではない。老いゆえの気力の衰えで軍を返すのでもない。光武帝の蜀を望むのを
そして劉曄は先祖の失態を知るも、蜀を攻めるが筋と思って諫言したが、いつもの通り深くは訴えなかった。同じく光武帝の失態を知る司馬懿自身、己の進言が正しいと思ったが、
果たして、主公は正しかったか。
長い征西であった。年は
魏公不望蜀 河野 行成 @kouzeikouno
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