第26話 難攻不落
「フンゴォォオ」
3mほど離れた所で人らしきモノが独りで寝ている。立ったままである。どうやら2人には気づいていないようだ。
「南澤。アレは敵か?気づかれていないようだが」
敵。その人らしきモノは苺色の甲冑を着た大人の武士であった。現実世界の歴史にでてくるような渋い赤色の甲冑ではなく、ショッキングな赤色のそれを着ている。異界ならではと言ったところか。立ったまま寝ている芸当も素晴らしいが、2人に全く気づかない様子は最早、滑稽である。
「平澤。脇の狭い通路を通るぞ」
「了解」
2人はボロボロの石畳を静かに小走りで抜けていった。空を飛べる南澤が常に先頭をリードする。
「シッ。平澤。静かに」
狭い石畳の道を抜けると大通りに出るのだが、何か音が聴こえてくる。
デシュンデシュンデシュンデシュン
足音だ。大きな怪物の足音だった。
「南澤。アレはトロールか?」
トロールに似たそれは5mほどの大きさで、皮膚はコンクリートのような灰色で、質感までそれに似ている。2人が小学校低学年のときに流行った有名なイギリスの魔法ファンタジー小説の映画の、第1作に出てくるトロールにそっくりだ。ただそれより一回りでかい。手には棍棒ではなく、大剣を携えている。
「なんだアノ厳つい凄い顔したトロールはよお。よし!イッチョかましてみるか!」
平澤は大通りに勢い良く飛び出し、全力疾走を試みた。
「正気かぁ!平澤ァァア!!!」
急いで南澤も後を追う。トロールは手前と奥に計2体いた。手前の方は撒いたが、奥の方が大剣を思いっきり振り下ろす構えをとった。それを無難にサイドステップで避ける平澤。
「気をつけろよ〜南澤!これはうかうかしてると、あのビッグサーベルの餌食になるぜ!」
「おう。避けられないスピードじゃあないな。てかカチコミブッパが過ぎるんだよ平澤は!」
「ふん!見たまえ南澤。奴の足を。胴体に比べて圧倒的に短足だ。つまり足が遅いに決まってるって訳よ。何もむやみやたらと突っ込んだ訳ちゃうで」
「お、おう」
突き進んだ先にはまたしても岩垣だ。今度は6mほどとやや低い。しかも今度はご丁寧にロープが上から垂れ下がっている。
「南澤。中々のアスレチックだな。今回のステージ。鬼もいないし、今はゆっくりと登らせてもらうとしよう」
「だな。しかし鬼に追われてたらと考えるとゾッとするぜ。こんな悠長な時間は無いぞ」
2人がよじ登った先には大きな櫓があった。高さは15mほどである。お隣に天守閣も見えるが、それとほぼ見劣りしないほどの大きさだ。
「観ろよ南澤!壮観なお城だなあ。こいつはすg、、、」
「平澤!危ない!!伏せろ!!!」
ドンッ
「うわぁ!!アブね!!!」
大砲が放たれた。平澤は凄まじい反射神経でしゃがみ、難を逃れた。
「「ビックリした〜〜」」
砲台に人はおらず。どうやらこの大砲は無人で放たれたものらしい。2人は急いで砲台の真横、死角へと入り込んだ。それから大砲が放たれることはなかった。
「南澤。このステージどう想う?」
「んーそうd、、、」
「お城だけに難攻不落と言ったところだな〜」
「言いたいこと決まってんなら、わざわざ聞くなよw」
「「あ」」
2人の正面、砲台の後ろに桜の大木が見えた。その距離10mほど。鬼の姿までは肉眼で確認できない。
「平澤。いよいよ来てしまったようだな、遊びの時間が」
次の更新予定
毎日 20:00 予定は変更される可能性があります
最強バディ 哲也 @Tetsuya_31
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。最強バディの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます