第25話 お城
「お2人ともお見事です。次のステージにご案内します」
「「、、、、」」
2人は久方ぶりに聴いた妖精の声で目を覚ましたが、特に発言することはなく彼女に対して沈黙の姿勢を貫いた。
「まーでもあれか。次のステージに挑戦して、進んだ先に現実世界に戻る方法はあるのだから、ゴールには近づいているってことだよな?南澤」
「そう言うこと!やるしかないよ!もう!早くやろ!」
「お!南澤珍しくテンション高いわね!アタイもやる気出てきたわよ!南澤がいれば百人力ざますからな〜」
「平澤!急にオネエキャラ出してくるんじゃねーよw」
「まぁそこは異界と言うことでお許しいただきたいw」
2人が笑っていると、真っ白だった視界が急に色彩を帯び始め、一気に視界が拓けた。
目の前には広大な水堀と高さのある石垣、離れたところに大きなお城が見える。周りの木々には提灯が飾られておりお祭りのような雰囲気を感じる。季節は気候から察するに3月下旬の日本といったところであろう。前ステージとは大きく異なり、2人が訪れたことが無いだけで、現実世界にも存在しそうな場所である。
「南澤。どうやら次のステージはお城のようだな。しかしまあ、地元のお城に比べて随分と立派なもんだ」
「平澤、もしかして一日城の話してる?アレって1日で完成させたのは伝説として話盛り過ぎだが、言うても突貫工事。さすがに本物のお城と比べてたらアカンのやないか〜」
「そうだな〜南澤。日本は広いし、ましてやここは異界だもんな〜」
2人はゆっくりと歩き出す。どうやらいつもの桜の大木は近くには無いらしい。それはすなわち、今はまだ鬼が近くにいないことを意味する。桜の木々のようなものもちらほら散見されるが、まだ蕾である。足元は緑の芝生と所々にタンポポが植えられており美しい。
「とりあえず南澤。アノお城を目指すとするか。ちょっと距離あるし道は複雑そうだけど、たどり着けないことは無さそうだ。案外このステージ、鬼に見つかる前に出口が見つかっちゃったりしてな」
「まぁ道が複雑そうで初見と言うのは、鬼を撒くことは難しくなりそうだけどねー」
「南澤!見つからなければ見つからないんだぞ!」
2人はとりあえず石垣に向かって歩き出す。近づく度に改めてその大きさに気づく。恐らく10mほどの高さだ。そしてしばらく石垣の周りを調べた。
「南澤。詰んだわ。この石垣を登る以外、城に行く手段がない。さすがにこの垂直な壁を、黄金スニーカーも無しに登るのは不可能だ」
グゥォン!
「「こ、これは、、、、!!」」
湧き出る壁。岩垣の一部が定期的に規則正しく連続して湧き出ては引っ込めてを繰り返している。
「なるほど南澤。湧き出る壁。否、湧き出る床を足場に、跳んで登れば上に辿り着けるって寸法だ」
「難易度はA級と言ったところだが、やるしかないようだな!平澤〜上で待ってるね〜」
そう言うと宙に浮いている南澤は楽々と高度を上げて頂上に辿り着いた。
「南澤、それほんとズルいよなぁ〜!いま行くから待っておれ!」
「、、、。平澤。いい話と悪い話どっちから聴きたい?」
「いい話!」
「、、、道がある!あと鬼もいない!」
「そのレベルかよw悪い話は?」
平澤は喋りながらも軽快にリズム良く足場を乗り越え、ちょうど今にも頂上に辿り着こうとしていた。
その瞬間、平澤の視界の右端に何か大きな動く物体を捉えた。
「、、、岩?」
2人の前には今度は恐らく5mほどの高さの土塀が続いていた。しかし問題はそこではない。塀の上の方の壁面から、大きな岩のボールが定期的に射出されている。
「平澤!悪い話だ!その正面は危ない!とりあえず横にそれるぞ!」
「お、おう!」
2人はとにかく左に向かって走り始めた。土塀はどこまでも続いているかのように見えるが、岩のボールが届かない位置までは逃げることができたようだ。
「南澤!何とか助かったな!しかしなんだよアノ岩。アブねーじゃねーかよ。一体誰があんなこと」
「シッ。平澤。静かに」
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