第24話 温もり

 「「なん、、だと」」


 2人の前には僅かな緑で覆われた、ほとんど枯れている木々が並ぶ。そしていつもの桜の大木。


 「平澤!またスタート地点だぞ!どうなってんだこのステージはよお!」


 「分からん!ただ見慣れた道には出れた訳だ。ん〜とりあえず鍾乳洞方面に向かうか」


 「了解!」


 鬼は変わらず後ろから追いかけてくる。


 「南澤〜あのトナカイさんも見慣れたものだな」


 「ああ。見飽きたと言うかトラウマまである」


 2人は特に問題なくトナカイをスルーし、走り続ける。


 「待て平澤!トナカイの後ろだ!」


 「え?」


 トナカイの後ろには道があった。ただ問題がある。


 「後ろか〜屁がなあ。アノくせえ強烈な屁がなあ」


 「いや、平澤。行くしかないぞ!これまで数々のルートを通ったし、もう新ルートにしか脱出できる鍵はない!仮に屁で飛ばされたとしても、新ルートに行ければ万々歳だ!」


 後ろから鬼も来ている状況において、平澤はトナカイを中心に大きく迂回し、後方に回れるように努めた。トナカイが体を左右に小刻みに揺らし始める。


 「こくなよ〜こくなよ〜」





 「っよし!行けるぞ!平澤!」


 「「ゴールだ!ゴールだ!ゴールだ!」」

 

 2人は未だ見ぬゴールがあることを信じ、とにかく走り込む。


 「いいぞ平澤!鬼は来ていない!」





 ヌッ





 「うわァァ!何それ!!アンタはモグラかよ!!!」


 足下の地面からいきなり湧き出た鬼に驚愕する2人。


 「平澤速く!速く!」


 「急げ僕!急げ!」


 「もう後戻りはできんぞ!平澤!」

 

 「行け!行ける!行ける!僕なら行ける!!」


 ここに来て最高速度が上がる平澤!鬼との距離をどんどん離していく!


 「平澤!ドアだ!!!」

 

 5mほど先にドアが出現し、その内側から光が漏れ出している。


 「今回も勝ったぞ南澤!このステージも僕達の勝利だ!」


 2人がドアの内側に入った瞬間、鬼が消えた。


 「平澤!これはもう完全に私達の粘り勝ちだな!4時間お疲れさま!」


 「ああ南澤。ちょっくら寝るとするかな〜さすがに疲れた気がするよ」


 2人は異界の火山の熱さではなく、真の温もりかなにかに癒され、目を閉じた。

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