第22話 キタ

 「平澤。振り返らずとにかく走れ」


 「あいよ」


 平澤はフォームを整え、全力疾走の態勢に入った。恐らく地面は鉄板のように熱いのだが、彼の精神力は既にそれを克服していた。


 「南澤!あのシェルターが見えるぞ!どうする?」


 「なるほど」


 どうやらブレイブロードの先はあのシェルターへと通じる道であることが分かった。それはまたしてもこのステージの出口を見つけることができなかったことを意味する。


 「平澤。鬼との距離はまだある。シェルターには入らず、隅の物陰に隠れて一旦鬼を撒こう」


 「あいあいさ〜」


 そう言うと平澤は屋根の下、物陰めがけてヘッドスライディングをかました。


 「来るなよ来るなよ来るなよ」





 しばらく静寂が2人を包んだ。





 「来ない」


 「キタ!」


 「え?!来てないじゃん!」


 「来てないキタコレ!」


 「そっちの意味かよ!そんなどーでもいいコントしとる場合かーっ」


 「ともかく鬼は撒いたようだ。ゆっくり慎重に出るとしよう」


 「平澤。そう言えばそこにハシゴあんな。このシェルターの屋上に登ってみるってのはどうだい?」

 

 「まあ試せるものは全部試しておこう」


 2人はハシゴを登った。不思議なことに、やはり外観では3mほどの高さであり、実際にそれぐらいの高さに彼らは到達した。


 「観ろよ南澤。煙突があるぞ」


 「ホントだ!上にサワガニみたいなのがいるぞ!可愛いなあ!あ〜可愛いn、、、ヤバイぞ平澤!鬼がこっち見てる!!」


 屋上から地面を見下ろすと、丁度見上げている鬼と目が合った。


 「「ほな」」


 2人はあてもなく走り始めた。


 「もうブレイブロードも行っちまったし、どこ行くよ南澤」

 

 「滝の中だ」


 「は?あんたバカァ?!」


 「大丈夫だ。熱くないはず。気を強く持って行こう」

 

 「ご乱心もいいとこ」


 「いいか平澤。アノ滝の中を注意深く観てたんだが、どうやら道が続いているようなんだ」


 「さすが南澤!ナイス観察眼!、、、と言いたい所だが。さすがに今回は恐えーよ」


 「作戦はこうだ。まずは私が滝の中に飛び込む。大丈夫だったら平澤が飛び込む。これで行く」


 「それのどこが作戦なのよ!」


 「大丈夫だ平澤!気を強く持って行こう!」


 そんな話をしていると、マグマの滝はもう2人の目の前に迫っていた。


 「お先に行くぞ平澤!行っけええぇぇ」


 南澤はマグマの滝めがけて突っ込んで行った。当然マグマが南澤にかかる。


 「行った?!」


 そう自分自身で確認するかのように言うと、南澤はマグマの滝の内側の道らしきモノの上で何事も無かったかのように浮いていた。


 「次は平澤の番だ!腹くくってくれよっ!」


 「お、おう!」


 平澤は走り幅跳びの構えをとった。

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