第21話 見上げた精神力 後編
「まぁ南澤。てんやわんやだ」
「ああ」
2人は勢い良く上空へ射出されている。そしていまはその落下の最中である。
「でもなんか南澤。なんかいい感じな気がするぞ。新たな局面を感情が追い付かないほどの超スピードで経験している。何事も経験と言うではないか」
「ああ」
「さっき雲行きがどうとか風向きがどうとか言ったことは全て、マグマに流そう!」
「ああ」
今回の局面において、平澤は情緒不安定となり、南澤は思考停止していた。間も無く地面に叩きつけられるお時間だ。
「南澤、覚えてるか?アノ『逆様公園』の『変化の泉』で大爆発が起こったときも僕達無傷だったろ?泉の水が一瞬で蒸発するほどのパワーであったにも関わらずだ。つまりそこから導き出される解は、この異界において物理の痛みなどは存在しないと言うことだ!」
「ほう」
「熱いだの腰抜けだの、それは全て内なる精神から来るものなのさ!病は気からって言うだろ?ここは気を強く持って僕は華麗に着地して魅せるさ!」
「お、おう!」
2人にはもう信じるしか道は残っていなかった。
「「UWAAAA!!!!」」
平澤は思いっきり両足から着地した。衝撃で両足が地面に埋もれる。
「フン!」
そう言うと、平澤は何事も無かったかのように足を埋もれた地面から抜き、立ち上がった。
「ホールインワンっ!観たか南澤!これが見上げた精神力さ」
「はい観てます。さすがだよ平澤。これは必勝法リストに書けるわ」
「でしょ?本日のウルトラC、MVP出ましたよ!」
「だがな〜観ろよ平澤」
「あ」
ここに来て何回も何回も観た、桜の木と鬼のセットがそこにはあった。
「「ほな」」
2人は走り始めた。
「今回ばかりはブレイブロード行きたいなあ、平澤」
「これまでアクシデント続きで完全に動揺してたからなあ。気を強く持って行こう!」
「鬼さんにも慣れたもんだ〜壁から来ない限りは大丈夫!」
2人はお馴染みのルートを駆ける。そしてマグマの滝付近まで来た。
「南澤。ここからは完全に初ルートよ」
「おう!」
2人は脇道に突っ込んだ。変な生き物たちが彼らに群がってくる。
「南澤、作戦はこうだ。恐くないとは言いつつも、基本的に恐いから避ける。避けれなかったら恐くないから、弾き飛ばす。これで行く」
「それのどこが作戦なのよ!」
「大丈夫だ南澤!気を強く持って行こう!」
平澤の楽観ぶりに加勢するかのように生き物たちとの距離も大きく離せている。見かけによらず動きが遅いようだ。
「どうだい南澤!地面は熱そうだから念のため幅跳びを繰り返しさせてもらうぜ!敵たちとの距離はもう10m以上かな〜」
「まずいぞ平澤」
「え?」
後ろを向きながら前進する南澤の表情が途端に険しくなった。生き物たちが道幅ギリギリに、左右に広がっていく。ナニかに道を譲るかのようだ。
「あ〜やっぱり」
「え?」
鬼が猛スピードで一直線に2人に向かってくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます