第14話 安地

 「いや〜ギリギリだったぁ!!観ろよ南澤!アイツ鍾乳洞の前で固まってるぞ」


 「こちとらギリギリでいつもいたくはないんだがな。ただどうやら鬼は鍾乳洞の中には入ってこれないらしい」





 「「いや〜〜助かった〜〜」」





 「平澤。黄金スニーカーはどうした?それこそ正に必勝法だろ?」


 「それがな〜南澤。どうやら今回は出せないっぽいんよ。それに加えて何なら前のステージより鬼は速くなってる気がするし」


 「オワタ\(^o^)/詰んどるやないかw」


 2人は鬼が絶対に鍾乳洞に入ってこないことを良いことに、和やかに談笑していた。


 「この安地こそが、このゲームの必勝法ってとこか。また出口に戻れば鬼とはどこかで遭遇するかもしれないが、その度ここに転がり込めば負けることはないな」


 「平澤。分かっているとは想うが、肝心なのは出口を見つけることだ」


 「まぁまぁ安地を見つけただけ、今は良しとしましょうよ〜」


 2人は念のため定期的に後ろを振り返りながら前へと進んだ。どうやら鬼は本当に入ってこれないようである。彼らは地底湖までたどり着いた。


 「大丈夫だ。やはり鬼は来ていないな」


 「いや〜観ろよ南澤。いつ観てもこの湖、めちゃキレイだよな!ちょっと触ってみちゃろ♪」


 平澤が湖に近づいた次の瞬間、突然、水面から鬼が顔を出した。どうやら泳いでここまで来たらしい。思わずキスしそうな距離までいた平澤は、おもいっきり後ろにのけぞった。


 「AHHHHH!!!!!」

 

 「UOOOOO!!!!!」


 「なんだよそれ!!!!そんなのありかよ!!!!!ちょっと待てよ!!!チョ待てよ!!」


 「、、、鬼って泳げるんか。平澤!とりあえず出口に向かって走るぞ!もう1回撒くしかないんだ!」


 「分かってる!でもいまのはヤバイよ」


 「つまりこのステージ。安地無いってことじゃあないか、これ」


 2人は一心不乱に走り、出口に着いた。鬼は気づいたら撒いていたようである。


 「南澤。とりあえず出るか」

 

 「ああ」


 「これで正面から鬼が来たら、僕泣いちゃうぞ」


 平澤はイジワルな子どもが甘えるような声色でそう言った。

 

 「あ〜。万と万尋のモノマネか。たしかボーだったな」


 「南澤。しっかり後ろも観といてくれよ」


 「あいよ」


 「しかし南澤。さっき鬼が泳いできたのは、正にMamma mia!(マンマミィア)だったわ」


 「Mamma mia!じゃあないぜ!なんで急にイタリア語なんだよ!そこはOh no!で良いだろ」


 「Oh,no! My cola! I don't have any tissues. Do you have any?!」

 

 「No,but I have a handkerchief. Here. Use this!って言わせんな!去年の英語の授業のLesson5の話は今はいんだよ!」


 「いや〜ほんと声に出して読みたくなる英文と言いますか。handkerchiefの綴りが難しすぎるし、あの最初の一文のCD音声めちゃ好きなんよな〜」


 「平澤。どうやら前にも後ろにも鬼はいないようだ。念のため慎重に進もう」


 南澤がそう言うと、2人はまた歩き始めた。鍾乳洞の近くに差し掛かる。


 「南澤。やっぱ安地寄ってっていいか?安心したい」


 「まぁええんちゃう。涼しいし」


 「湖まで行くとまた鬼が泳いでくる可能性がある。手前の道で少し休もう」


 平澤が岩壁にもたれようとした次の瞬間、突然、壁から鬼の腕が出てきた。またしても平澤は、おもいっきり反対側にのけぞった


 「UWAAAAA!!!!!」

 

 「おまえどっから来んだよ!!!!!」

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