第13話 ゴール

 「観ろよ南澤!なんか洞窟みたいなのがあんぞ」


 「っ!風が涼しい〜」


 「これは!ガンガンに冷えてやがるッ!あ、ありがてえッ!」


 「平澤。茶番はいいから早く中に入ろう」


 2人はどんどん奥へと前進していく。ひんやりして気持ちがよい。


 「うわ〜お」


 「間抜けなリアクションだな〜平澤w」


 2人は拓けたところに出た。天井が非常に高い、広大な鍾乳洞であった。上には巨大なつらら(鍾乳石)が無数にぶら下がっている。


 「南澤。観ろよアレ。50mぐらいあんぞ」


 「異界っぽいサイズ感出してくるな〜」


 足元はというと、細い道が奥まで続いている。ただ両サイドはマグマではない。サファイアブルーの地底湖だ。おそらく熱くはない。そのあまりの美しさに2人は心を奪われた。


 「南澤、ヤツはとんでもないものを奪っていきましたよ、、、僕の心です」


 「おう」


 2人はしばらく前進を続けた。方向感覚は分からないがとにかく前進し続けた。異界は疲れないし、ここは幸いにも熱くない。彼らには好都合であった。


 「南澤!アノ光!もしかしてもういつものドア見つけちゃいました?」

 

 「平澤。今回は想ったより楽勝だったな。なんせ1度も鬼に追われないままゴールだからな」


 「たしかにな〜!最初がピークだったわ。あとはアノくそアチいエリア」


 「たしかにたしかに」


 2人は余裕の笑みを浮かべて光に包まれに行った。


 次の瞬間、光が消え失せ、一気に視界が拓けた。地表に出たようだ。


 「南澤。さすがに易々と完全攻略とはいかないようだな」


 「平澤。アレ」

 

 「ンギャ」


 2人の目の前には鬼がいた。その距離5mほどだ。お互い見つめ合っている。どうやらスタート地点付近まで戻ってきたようだ。


 「見つめ合〜うと〜すっな〜鬼〜おs

 

 平澤が歌いきるのを当然待ってくれるはずもなく。鬼は動き出した。2人も走り出す。


 「平澤。この鬼ごっこには必勝法ある?」


 「知るか!僕に聞くなよ。見当もつかんわ」


 「とりあえずここは、一旦さっき歩いたルートを行くしかないか」


 「がってんで!」


 2人がしばらく走っていたその時だった。

 

 「アッチッチ」


 「燃えてるんだろうか?」


 「ちげーよ!所々地面がアチーのよ!見た目じゃわかんねーけど」


 そう言うと平澤は不規則なスキップを始めた。地面に反応しているようだ。

だがそうこうしている内に鬼がにじり寄ってくる。


 「うぉい平澤!鬼に追いつかれるぞ!今は我慢しろ」


 「無理無理無理無理無理無理」


 「もう少しだ!頑張れ!もう少しでアノ鍾乳洞だ!我慢我慢我慢我慢我慢我慢」


 鬼までの距離は1mほどだ。


 「南澤。僕、鍾乳洞入ったら絶対に全力疾走するから、見捨てないでおくれよ」


 「そうだな」


 「あ〜んもう!ギブギブギブギブギブ」


 2人は一旦、鍾乳洞に転がり込んだ。


 「「Foooo!!!!」」

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