第12話 ネクステ

 「お2人とも再びよく逃げられましたね。でもまだ終わってないですよ」


 「おい!」


 「はい」


 「妖精とやら、あと何回この下らん鬼ごっこを続ければいいか教えろ!」


 「それは秘密です。ただお気づきの通り、難易度はドンドン上がっていきます」


 「「何!?だと、、、」」


 光に包まれていながらお先真っ暗とはこの事だ。2人はいま光の中で静止している。質問した平澤は大きくため息をついた。


 「妖精さん教えてください。進んだ先に現実世界に戻る方法はありますか?」


 「それならございます」


 「よし!」


 そう言うと南澤は顔を上げて真っ直ぐ前を向いた。


 「平澤。2人で行くぞ、必ず現実世界に戻るんだ」


 「おう」


 「ネクストステージの準備が整いました。間もなくゲートが開かれます」


 「でもよ〜南澤。1回やってみたら分かるけど、鬼に追いかけられるのもうトラウマになるぞ。最初は可愛い小鬼かと想ったけど、泣きそうになるぜ〜」

 

 「平澤。そんな弱気では現実世界に戻れんぞ!大丈夫。私もついて行きますから」


 「たしかにな〜!南澤がいれば百人力といっても過言じゃあないぜ」


 「でしょ?」


 次の瞬間、真っ白だった視界が急に暗くなり、一気に視界が拓けた。


 目の前にはマグマと、離れたところに大きな火山が見える。山頂が明るいオレンジ色に染まっている。両端には僅かな緑で覆われた、ほとんど枯れている木々が並ぶ。地面は岩なのか土なのかよく分からない物質でできているようだ。


 「南澤。どうやらネクステは火山のようだな。異界だね〜全くもう」


 「そしてまたあそこに桜の木が見えるぞ。異界だから良いけど、明らかに火山とミスマッチだな」

 

 「ああ。ここまで来ると鬼も可哀想と言えなくもない」


 「しかし困ったな。かなり広そうな上に、『逆様公園』と違ってどこに何があるかさっぱり分からんぞ」


 「南澤!とりあえず前進あるのみだな!」

 

 そう言うと2人は鬼とは反対方向に歩きだした。鬼には気づかれていない。


 「まず後退したはいいが、こっちは木すら生えてないぞ。草も生えんわw」


 道は次第に細くなっていく。両サイドのマグマがどんどん道を侵食しているからだ。マグマは今にも噴き出しそうな勢いでブクブク煮えたぎっている。


 「てか前見てみろよ南澤。マグマの滝がある。触れたら大炎上不可避だな」


 「でも戻っても鬼とぶつかるしなあ」


 南澤は冷静に何か考え事をしている最中かのように、ボソッと応えた。


 「お!滝の脇にも細い道があるぞ!」


 「待て平澤!道の上になんかいるぞ」


 目の前には2人の見たこと無い生き物が闊歩していた。蜘蛛ともサソリとも区別がつかないその生き物は、白と紫の固そうな外皮に覆われている。


 「南澤。牙で噛まれるのか尻尾で刺されるのか爪で引っ掛かれるのかわかんねーけど、これだけは分かる。ありゃあ絶対に猛毒だ」


 「同感だ。どうやら前進するしか選択肢は無いらしい」





 「「、、ダメだ!!!!!!くそアチい!!!!!!」」





 2人は前進し続けた結果、とんでもなく熱いエリアに来てしまった。


 「南澤。これはさすがに戻るか?」


 「そうだな。次に『くそアチい』って言ったら戻ろう。『アーチーチーアーチー燃えてるのだろうか』も無しな」


 「言うと想った。GOヒロミね」


 2人は汗と笑顔を絶やすことなく、前進を続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る