第9話 変化

 2人は『運命の民家』をくまなく探索した。低いカラフルな壁の近く、ガラスの下にも机やらなんやら家具が埋まっている。


 「平澤!!」


 「アブね!!!」


 「って良く観たら小鬼の模型だ。またかよ」


 定期的に驚かしてくるのは勘弁して欲しいと言わんばかりに、2人は同時にため息をついた。3分ほど捜索した後、彼らは『変化の泉』に向かった。


 「そう言えば南澤知ってっか?泉の前で目を閉じると、願いが叶うらしいぞ!」


 次の瞬間、平澤は目を閉じながら歩いた結果、足元が安定していないところで滑ってずっこけた。


 「またかよ!いってぇ〜!!」


 「転びたいってお願いでもしたんですかね?w」


 そう言うと2人は同時に声に出して笑い始めた。一向に出口が見つからない現実とのギャップで、彼らは疲れ果ててしまったのである。


 「そう言えば小鬼の奴、全然来ないな?てか平澤。どうやったら黄金スニーカーが出せるかそろそろ分かったか?」


 「南澤。答えは分からん。ただなんとなくだが、小鬼と対面しないと発動しないんだと思う」


 「なるほどね~」


 2人は5分ほど『変化の泉』でボーッと過ごした。現実世界とは違って、時より泉が泡風呂みたくなるのを暇潰しに見物していた。

 

 「おい」


 「おう」


 5mほど離れた『運命の民家』の影に鬼はいた。カラフルな壁の迷路をゆっくりと徘徊している。こちらに気づいている様子はない。


 「南澤。アレは鬼だよな?」


 「だな。間違いないッ!」


 「また懐かしい芸人の決めゼリフ持ってくるね〜もうすっかり死語やでw」


 平澤は乾いた笑みを漏らしたその時だった。

 

 ジュドーーーーーーン!!!!!!


 「「は?」」


 2人は思わずハモった。『変化の泉』の泡が大きく膨れ上がり、突然大爆発を起こしたのだ。泉の敷地、約1,500㎡。の水が一瞬で蒸発するほどのパワーであった。


 「南澤。この状況で僕達無事ってスゲーよな」


 「ああ。なんてったって異界だからな。ただうるさすぎて鼓膜破れるかと想ったわ」


 「平澤」


 「お」


 爆音で鬼に見つかったようだ。既にこちらに向かって等速で動いている。


 そしてやはり次の瞬間、平澤のスニーカーが再び光り始めた。


 「ふん!ようやく変化したか、瞳を閉じて、願った甲斐があったぜ。行くか南澤!」


 「ああ。『楕円のメインフィールド』の奥へ行こう。出口があるとしたらそこしかない!」


 「あいあいさ〜」

 

 2人は久しぶりに超スピードで走り出した。

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