0秒後の奇跡
月神天音
第1話夢の終わりと始まり
月島光は、最近奇妙な夢を見ていた。真っ白な空間に、たった一人たたずむ少女の夢。彼女は銀色の髪を持ち、透き通るような肌をしていた。
「‥‥‥また、この夢」
光が目を覚ますと、いつも胸のあたりが締め付けられるように痛む。漠然とした不安感。それは、夢の中の少女が訴えているかのようだった。
ある雨の日、光は大学からの帰り道、ずぶ濡れで道端に座り込んでいる少女を見つけた。夢の中の少女とすごく似ている。
「大丈夫?」光が声をかけると、少女は不安げに光を見つめた。
「あの……私、もうすぐ消えちゃうの」
光は驚いた。少女の頭には、青白い光で数字が表示されていた。72:00:00。
「何それ、冗談?」
「違う。これは、私がこの世界にいられる時間」少女は寂しそうに笑った。
「私は、あなたの夢から生まれた存在なの。カウントダウンが終わるまでに、この世界で生きたいと強く願う『人間の心』を手に入れなければ、消えてしまう」
光は混乱した。しかし、彼女の必死な瞳を見て、嘘ではないと思った。光は意を決して、少女に手を差し伸べた。
「とりあえず、ここじゃ風邪ひくよ。うちに来る?」
「いいの?」
「うん。名前は?」
「リル」
光はリルを自分のアパートへ連れて帰った。この出会いが、光の平凡な日常を、そして彼の心を大きく変える「0秒後の奇跡」の始まりだった。光は、リルをなんとか人間に戻してあげたいと強く思った。
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