縁編 第四話
まずは一階の大水槽についての話題に。
屑と呼ばれているものが、亡者の記憶だと惺大はもう知っている。けれど、漓宛は屑を
漓宛に説明を終えると、今度は惺大が問いかけてきた。
「どうして人間の記憶が海に流れ着くのかは教えてもらってなかったよな」
その問いの答えを簡潔に教えてあげる。
来世に前世の記憶を持っていけない規則は、
そこで、清らかな山水で亡者たちの記憶を漱ぐことにしたようだけれど、そのせいで
『人間という生き物は、現世でも隠世でも海を汚すのね。素晴らしい作品をお創りなられたことで』
と
だけど、このような神様たちの事情は二人には話せない。僕が人間の試作品だと知られたくはないからね。だから色々と掻い摘んで話している。そうすれば、ただ隠世での暮らしが長い亡者としか思われないから。
惺大と漓宛が階段を上り二階での案内が行われている間に、一階の壁にかけられたコルクボードと向き合った。
今日のノルマを記したメモ用紙を画鋲で留めておく。
漓宛にはまだ説明していないけれど、惺大には神様からの依頼だと話してある。彼にも
依頼というのも、
毎日あの御方の命で試作品であるウミネコがメモ用紙を運んで来るから、失くさないようこのコルクボードへ貼りつけている。
その作業が終わって二階へ行くと、二人は甲板に出ていた。もう案内も終わっている頃だろうし、そろそろ船を沖に出そう。
二人に軽く手を振って、船を動かしながらふと思う。
この二人とはどれくらいの間一緒に過ごせるだろうか、と。
惺大に漓宛、二人がどんな記憶を持っていてどんな記憶を釣り上げるのかも楽しみだ。
僕は再び亡者を乗せて、人間を学ぶ暮らしを始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます