縁編
縁編 第一話
僕は亡者でも、神様でもない。何にもなりきれない、中途半端な存在。
強いて言うならば、現世に生きることのなかった人間の試作品だ。
創造の神様である
無論、その試作品は隠世から出ることはない。
だから、僕も。
生まれなかったも同然とも言えるけれど、僕がこうして呼吸しているように確かに存在している。現世が全てではないとあの御方は僕に言い聞かせたけれど、納得がいかなかったのは僕が現世を知らないからだろうか。
試作品と一重に言っても色々だ。無機物である孫の手や洗濯板といった物と違って、僕のような生きていて成長を遂げる試作品もある。後者である僕は
そのせいか、あの御方は気に入って沢山人間を創っては現世に誕生させるようになった気がする。
その詫びにと、屋敷の中では自由にさせてもらえた。不満を訴えた僕には、特別にと屋敷の出入りも許された。
隠世の中でならどこへ行くのも許されている。万が一僕が亡者の列に紛れて現世へ行こうと企んでも、その道は閉ざされるようになっている。
試したことがるのかって?、勿論だよ。
どんな手を使っても隠世から出られないと悟った時、不思議と絶望はしなかった。それが無理ならと、隠世に留まっている亡者と交流をするようになっただけのこと。
彼らは現世に生きた、試作品ではない人間だ。僕の知らないもの、こと、世界を知っていて、一緒に過ごせば僕も現世のことを知ったような気持ちになれた。
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