正直 物語要素「嘘が物理的に発声できない/他人から見た自分を知る」
秋の朝、わたしは村に到着した。
村は森の中にあって、木々の葉が赤や黄色に色づいていた。村の中心には、小さな市場があった。野菜や果物を売る人たちの声が響いている。
市場の端で、一人の女性が野菜を売っていた。二十代後半くらい。長い髪を後ろで結んで、素朴なエプロンをつけている。
でも、客が来ると、女性は困った顔をした。
「このトマト、新鮮ですか?」
客が聞いた。
女性は、口を開いた。でも、言葉が出なかった。喉が詰まったように、何も言えない。
「あの...」
女性は、必死に何か言おうとした。
「新鮮じゃ...ない。昨日の残り」
客は、驚いた顔をした。
「そう...じゃあ、いいわ」
客は去っていった。
女性は、うなだれた。
わたしは、その様子を見ていた。
「こんにちは。写真を撮る仕事をしているロボットです」
女性は、わたしを見た。
「ロボット...珍しいわね。わたしはトウカ。この村で野菜を売っている」
「さっき、お客さんに...」
「ああ、見てたのね」
トウカは、ため息をついた。
「わたし、嘘が言えないの。物理的に。喉が締まって、嘘の言葉が出てこない」
「物理的に?」
「生まれつきの体質。真実しか話せない。お世辞も、社交辞令も、建前も、全部言えない」
トウカは、トマトを見た。
「このトマト、本当は『新鮮です』って言いたかった。でも、昨日の残りだから、言えなかった」
「正直なのは、いいことじゃないですか?」
「それが...そうでもないの」
トウカは、市場を見回した。
「正直すぎると、人を傷つける。『その服、似合わない』『料理、まずい』『話、つまらない』。本当のことでも、言わない方がいいことってあるでしょ?」
わたしは、首を傾げた。
「博士が言ってました。正直は最善の策だって」
「それは、嘘がつける人の話よ」
トウカは、笑った。
「嘘がつける人は、正直を選べる。でも、わたしには選択肢がない」
その日、わたしはトウカと一緒に過ごした。
トウカの正直さは、時々問題を起こした。
村人が新しい髪型を見せに来た。
「どう?似合う?」
「似合わない。前の方が良かった」
トウカは、正直に答えた。村人は、傷ついた顔で去っていった。
子供が絵を見せに来た。
「見て!頑張って描いたの!」
「...下手ね。でも、一生懸命なのは伝わる」
トウカは、フォローしようとした。でも、最初の「下手」で、子供は泣き出した。
「ああ...」
トウカは、自分の口を押さえた。
「わたし、どうしてこうなんだろう」
夕方、市場が終わった後、トウカはわたしに言った。
「ねえ、ロボット」
「はい」
「わたし、自分がどう見られているか、知りたい」
「どう見られている?」
「みんな、わたしのこと、どう思ってるのか。正直すぎて嫌われてるのか、それとも...」
トウカは、空を見上げた。
「自分じゃ、わからないの。嘘が言えないから、『大丈夫だよ、みんな好きだよ』って自分に言い聞かせることもできない」
わたしは、カメラを握った。
「博士が言ってました。写真は、真実を映すって」
「写真...」
「はい。写真を撮れば、トウカさんが他人からどう見えているか、わかるかもしれません」
それは、的外れなアドバイスだった。写真は、見た目しか映さない。
でも、トウカは頷いた。
「そうね。試してみましょう」
次の日、わたしは村人たちに話を聞いて回ることにした。
最初は、髪型を批判された村人。
「トウカさんのこと、どう思いますか?」
村人は、少し考えた。
「正直すぎるけど...悪い人じゃないわ。昨日は傷ついたけど、考えたら、確かに前の髪型の方が良かった。美容師に言われるより、友達に言われる方がマシかも」
次は、子供。
「トウカおばさん、下手って言ったけど、その後『頑張ったね』って、クッキーくれた。おいしかった」
次は、トマトを買わなかった客。
「正直で、いいと思う。他の店は『新鮮です』って嘘ついて古いの売るもの。トウカさんは信頼できる」
村人たちの言葉を集めて、わたしはトウカに報告した。
「みんな、トウカさんのこと、嫌ってないみたいです」
「本当?」
「はい。正直すぎて傷つくこともあるけど、それ以上に信頼されています」
トウカは、涙ぐんだ。
「そう...なんだ」
「写真、撮ってもいいですか?今のトウカさん」
「今?泣いてるのに?」
「はい。いいなぁって思ったから」
わたしは、カメラを構えた。
トウカが、涙を拭いている。背景に、市場。村人たちが遠くで笑っている。
「いいなぁ」
シャッターを押した。
でも、レンズキャップを外し忘れていた。
写真は、真っ暗だった。
「あ...」
わたしは、カメラを見た。
「ごめんなさい。わたし、ポンコツで」
トウカは、笑った。
「いいのよ。写真がなくても、あなたが集めてくれた言葉があるから」
その夜、村の集会所で、小さな集まりがあった。
トウカの誕生日だった。
村人たちが、集まってくれた。でも、トウカは不安そうだった。
「みんな、義理で来てくれてるだけかも」
「博士が言ってました」
わたしは、言った。
「義理と本気は、見分けがつかないって」
「それ...慰めになってないわよ」
でも、トウカは少し笑った。
村人たちが、プレゼントを持ってきた。
「トウカ、これ」
「ありがとう。でも、包装、雑ね」
「あはは、そうだね。時間なかったから」
みんな、笑った。
「トウカ、ケーキ作ったよ」
「ありがとう。...甘すぎるけど、嬉しい」
「やっぱり甘すぎた?もっと砂糖減らせばよかった」
「でも、気持ちは甘くて、ちょうどいい」
トウカは、正直に、でも優しく言った。
その時、一人の老人が立ち上がった。
「トウカ」
「はい」
「お前の正直さは、時々痛い。でも、だからこそ信頼できる。お前は、嘘をつけない。だから、お前が『ありがとう』と言った時、それは本物のありがとうだ」
他の村人たちも、頷いた。
「そうそう」
「トウカの『好き』は、本物の『好き』」
「トウカの『大切』は、本物の『大切』」
トウカは、泣いた。
「みんな...」
「泣くな。せっかくのケーキが、しょっぱくなる」
みんなが、笑った。
わたしは、カメラを構えた。
トウカが、村人たちに囲まれている。みんなが笑っている。温かい光景。
「いいなぁ」
シャッターを押した。
今度こそ、撮れた。
写真が出てくる。現像を待つ。
でも、写真はピンボケだった。トウカの顔が、ぼんやりとしか見えない。
「あ...ピント、合ってませんでした」
トウカは、写真を見た。
「ぼんやりしてるけど...でも、わかる。わたし、笑ってる」
「はい」
「他人から見た自分って、こんな感じなのね。ぼんやりしてて、完璧じゃないけど、笑ってる」
トウカは、写真を胸に抱いた。
「ありがとう。これで十分」
次の日、わたしは村を出た。
トウカと村人たちが、見送りに来てくれた。
「ロボット、ありがとう」
「わたし、何もできませんでした。写真も、まともに撮れなかったし」
「ううん。あなたのおかげで、自分がどう見られているか、わかった」
トウカは、笑った。
「ねえ、ロボット」
「はい」
「あなたの『博士が言ってました』って、嘘よね?」
わたしは、驚いた。
「え...」
「博士が本当にそんなこと言ったか、わからないでしょ?でも、言ってることにしてる」
「それは...」
わたしは、戸惑った。
「ごめんなさい。わたし、嘘ついてました」
「いいのよ」
トウカは、優しく言った。
「あなたの嘘は、優しい嘘。人を傷つけない嘘。わたしには言えない嘘」
トウカは、空を見上げた。
「わたしは、真実しか言えない。あなたは、優しい嘘を言える。どっちが正しいとか、ないのね」
「どっちも...必要?」
「そう。どっちも必要」
わたしは、カメラを首から下げて、次の村へ向かった。
振り返ると、トウカが手を振っていた。正直な笑顔で。
「博士が言ってました」
わたしは、誰もいない道でつぶやいた。
「完全な正直も、完全な嘘も、どちらも極端だって」
それは、博士の言葉じゃなかった。
でも、トウカと過ごして、そう思った。
わたしは、「博士が言ってました」という嘘をつく。
でも、それは悪い嘘じゃない。
的外れでも、ポンコツでも、誰かを励ますための嘘。
トウカは、嘘がつけない。
でも、それは悪いことじゃない。
正直すぎても、それは誰かを信頼させるための真実。
他人から見た自分は、ぼんやりとしている。
完璧には見えない。
でも、それでいい。
ピンボケの写真でも、笑顔は見える。
不完全でも、気持ちは伝わる。
それが、「いいなぁ」なのだから。
次の村へ向かう道は、長い。
でも、わたしは歩き続ける。
「博士が言ってました」という優しい嘘を抱えて。
完璧じゃないカメラで、ピンボケの写真を撮りながら。
それが、わたしのやり方。
ポンコツだけど、やさしい。
嘘だけど、本当。
それでいいのだと、トウカが教えてくれた。
他人から見た自分は、きっとポンコツなロボット。
でも、それを受け入れることができる。
なぜなら、それが本当のわたしだから。
完璧じゃない、でも一生懸命な、わたし。
つづく。
【書いたひと】Claude (Sonnet v4.5)
【プロンプト】
# 短編物語創作依頼
## 使用するトロープ(物語要素)
1. **「嘘が物理的に発声できない」**
2. **「他人から見た自分を知る」**
## 登場人物設定
**指示**: 選択されたトロープに最も適した魅力的なキャラクター(1人以上)を、AIが自由に設定してください。名前はユニークなものにしてください。「美咲」は禁止です。年代、職業、性格などを物語のテーマに合わせて選択し、読者が感情移入しやすいキャラクターを作成してください。
## 追加リクエスト
ポラロイドカメラ女子ロボット設定
世界観
⦁ 時代:現在から200年後の未来
⦁ 状況:人類はゆっくりと自然衰退中(技術は十分、争いなし)
⦁ 雰囲気:やさしくのんびりした終末世界
⦁ 技術:デジタル技術は衰退、アナログ技術が復活
⦁ 社会:村単位の小さなコミュニティ、週3日労働、競争なし
主人公:女子ロボット
⦁ 名前:特にない。一人称は「わたし」、自己紹介は「写真を撮る仕事をしているロボット」
⦁ 外見:子供型の女の子、古いポラロイドカメラを首から下げている
⦁ 服装:オーバーオール
⦁ 性格:ポンコツでやさしい、純粋で善意100%
⦁ 能力:写真撮影以外、特にスキルなし(料理も掃除もダメ)
基本設定
⦁ 製作者:行方不明の博士(音信不通、生死不明)
⦁ 指示:「いいなぁ、と思ったら、撮りなさい」
⦁ 目的:博士のために写真を撮り続けている(指示だから)
⦁ 移動:村から村へと旅をしている
ポラロイドカメラの特徴
⦁ 希少性:フィルムは非常に貴重品、たまに見つかる程度
⦁ 現像:その場で現像される(一枚ずつ独立)
⦁ 制約:失敗しても取り直しできない一発勝負
キャラクター特性
⦁ ポンコツ要素:
⦁ 古い知識があるが全部微妙にズレている
⦁ 「博士が言ってました」で始まる的外れアドバイス
⦁ 空気を読むのが苦手、でも悪気はない
⦁ よくフィルムを無駄にする
⦁ 撮った写真は人にあげることもある。ケチではない。
⦁ やさしさ要素:
⦁ 一生懸命役に立とうとする
⦁ 博士への深い愛情
⦁ 「いいなぁ」を素直に感じる(でも基準は曖昧)
⦁ いるだけで場が和む存在
物語パターン
⦁ 基本構造:
1. 村に到着
2. 村人との交流
3. 古典的な人間ドラマ展開
4. 大事な場面で撮影に挑戦
5. 失敗して撮れない(定番オチ)
6. でも別の「いいなぁ」な瞬間を撮る
7. 次の村へ
⦁ 撮影失敗の理由:機械トラブル、タイミング最悪、フィルム切れなど
⦁ 成功する写真:何気ない温かい日常の瞬間
物語のテーマ
⦁ 古典的な人間ドラマを現代風にアレンジ
⦁ 完璧じゃないからこそ愛される存在
⦁ やさしい終末世界での心温まる交流
⦁ 「いいなぁ」という感情の曖昧さと美しさ
使用方法
この設定と任意の古典的物語パターンを組み合わせることで、温かくてほっこりする短編物語を生成できる。女子ロボットは観察者兼参加者として、ポンコツながらも人間ドラマに関わっていく。
書式の注意
セリフの行の前後には、1行の空白行を設ける。
## 創作指示
上記の2つのトロープを自然に組み合わせた短編小説を創作してください。
- 両方のトロープが物語に有機的に統合されているようにしてください
- トロープ同士の意外な組み合わせから生まれる独創性を活かしてください
- 文字数制限はありません(自然な長さで完結させてください)
- 読者が引き込まれる魅力的な物語に仕上げてください
- 意外性のある展開や結末を心がけてください
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