【新版】龍の案内人と焼痕の旅人

🐉東雲 晴加🏔️

序章―願い―







 風が唸る。


 木々は揺れ、白銀の龍は闇夜に舞い上がり、その身体をより浮かび上がらせた。その白い巨体は、二人を振り返りもせず、ゆっくりと高く空に舞い上がってゆく。


 

 (アルグントラウス山の龍よ。どうか、どうかアザードに鱗をあげて)


 ナギは願った。


 今までの日々に何の不満もなかった。幸せだった。

 家族のいない日々に、自分も寂しさを感じなかったわけではないけれど。


 彼に出会うためだった。きっと、彼をここへ導くためだった。

 その役目のために、もし自分がいたのだとしたら、


(お願いだ。彼の焼痕を消してあげて欲しい)



 彼が、新しい道を行けるように。笑って生きられるように。

 その願いが叶えば、ナギは本望だ。

 


 遠く、近く。風鈴が幾千も鳴ったような音がする。

 夜のはずなのに、鱗が白く光り輝いて、周りは昼間のように明るい。


 そのうち、鈴の音も風の音もすべての音が一瞬止んで無音になる。ナギはそのうち光の渦に包まれて、何もわからなくなった。

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