運命の舞台設定とYou tube の衝撃
第3話 企画展の予言
【 魂の契約】
「勝手にしろ。だが、それは検死だ。創作ではない。」
テオの諦めにも似た言葉を最後に、ユキによる「亡霊の音楽教師」のレッスンは次の段階へと移った。
ユキは、テオの「新しいコード」の誕生を、ジョン・レノンの魂がテオ・チャールズとして生きる決意だと確信した。
ユキの指導の下、テオは、ギターとピアノの両方で驚異的な成長を見せた。
彼の指は、失われた45年の時を埋めるように、メロディとコードを次々と再生していった。
テオは、自分の身体が自分の意志とは関係なく、運命の創造性に服従していくのを感じていた。
【 世界を覆う都市伝説】
テオが公の場に出る直前、ユキがプロデュース(企画)を務める東京の現代美術館では、展覧会『IMAGINE AGAIN: 45年後の平和のメッセージ』が開催されていた。
その裏側で、インターネットとゴシップ紙では、ある都市伝説が熱狂的な広がりを見せていた。
それは、過去に数々の事件を的中させてきたとされる匿名の予言者が、
「45年後、東洋の地で、東洋の子(オーシャン・チャイルド)の魂が再誕する。彼は、日本語で、平和への新しい歌を世界に贈るだろう」
と予言した、というものだった。
この予言は、ジョン・レノンの再来説として、世界中で半ば運命論的なムーブメントを引き起こしていた。
【企画展『IMAGINE AGAIN』の開幕】
レッスン開始から間もなく、ユキはテオに依頼をした。
「テオ。このアート作品は、あなたの魂を映し出す鏡よ。展示期間中、あなたは毎日、この作品の横でギターを弾いてほしいの。」
テオは、ユキの強引さに苛立ちを覚えた。
「私は、アートを消費する道具ではない。」
「そうよ、あなたは道具ではない。あなたは作品そのものよ。」
ユキは、挑戦的な笑みを浮かべた。
「あなたがギターを弾けば、その音はジョン・レノンの音として、ユキ・オザワの作品に組み込まれる。そして、あなたは私と並んで、一つの運命的な作品となる。」
テオは、ユキの言葉に逃れられない運命を感じ、同意した。
【 噂の火種】
展示初日。テオは、美術館のロビーに設置された「星の紙」の脇で、アコースティックギターを抱えていた。
ユキは、その隣で、ヨーコを彷彿とさせるシックな黒いドレスに身を包み、来場者に作品の説明をしていた。
テオが、ビートルズの初期の曲を皮肉を込めて弾き始めると、来場者の視線は、瞬時にテオとユキの二人に釘付けになった。
「見て、あの男性。ジョン・レノンにそっくりじゃないか?」
「それだけじゃない。隣のプロデューサー、ユキ・オザワも、若い頃のヨーコに瓜二つだわ!」
会場は、アート作品そのものよりも、
「奇跡の再現」
を目撃したかのような熱狂的な噂に包まれた。
テオとユキの容姿の酷似は、ビートルズファンやメディア関係者の間で、瞬く間に「運命の再会」として囁かれ始めた。
テオは、世間の野次馬的な視線に激しい不快感を覚えたが、ユキは微動だにしなかった。
「見たでしょう、テオ。あなたの魂が、運命の再会を求めていたのよ。」
ユキは、テオの耳元で囁いた。
「これは、私が仕組んだ運命。あなたの生まれ変わりの噂は、もう誰にも止められない。」
テオの「生まれ変わり」の噂は、ここから、ある都市伝説系ユーチューバーの目に留まり、世界的な炎上へと発展していくことになる。
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