第7話 結衣の報告

 自宅に帰ると、結衣から電話が来た。驚くべき内容だった。


「蓮、坂本律はどうだった?」


 俺は今日律さんと話した事を洗いざらい結衣に伝えた。


「……と言う訳さ。律さんは原因じゃないみたい」

「やっぱりね! あのメイさんが坂本律ごときにフラれる訳ないじゃない」

「……はは。知らなかったくせに」

「それより蓮!ビッグニュースよ。メイちゃんの居場所が分かったの。明日刑事が逢いに行くって!」

「なにい!?」


 俺は飛びあがって「イッタ!」机に膝をぶつけた。壁のポスターのメイが俺を笑っていた。


「しかも! しかもだよ! 私も一緒に行けることになったんだ!!」

「うっそ、絶対うそだ! あり得ない! この期に及んでウソなんかつくんじゃない!」

「ホントだもーん」

「マジか……」


 どうしたらただの平凡なそこらの中学二年生が超有名人に会いに行けるんだ? しかも失踪という緊急事態だぞ。


「刑事さんと直接話したの。坂本律と私は知り合いで、メイさんのことも知っているって言っちゃった。メイさんの方はウソだけどね」


 律さんを知ってると言えば知っているけど、それにしてもあり得ない。


「まさかおまえ、刑事とヤバイ約束してないよな?」

「バカ!」


 鼓膜が破けるような声が聞こえた。後で聞いたところによると、刑事は律さんと結衣のことを話し合って同行は問題ないという結論になったようだった。


「耳がいってえ。なあ、俺も行っていいか? いいだろー? 俺だってメイちゃんに会いたいよ!」

「いやあ、どうしようかな~。蓮は私の事が好きなんでしょ。蓮をメイちゃんに会わせるとやばいよね!」

「頼みます! お願いします! 結衣様、女神様、俺も連れて行ってください!」

「しゃーないな。連れて行ってあげるよ。その代わりメイちゃんの事は好きにならないこと!」

「好きになっても結衣より好きにはならないよ。誓う」

「それならば許す! メイちゃんは私のものだからね!」

「は? 何それ、変な感じ!」


 女同士じゃん…… 

 満月は人をおかしくする。そんな幸せな夜だった。

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