光の底で

朔つかさ

prologue

世界が、ひとつ息を止めた。


誰かの声が遠くで途切れ、

その静けさだけが、ゆっくりと広がっていく。


泣いた人も、笑った人も、

何も感じなかった人でさえ、

その静けさの中で、同じように息をしていた。


終わることは、消えることではなく、

変わらないことも、またひとつの変化だった。


光は触れられるたびに形を変え、

闇は抱きしめられるたびに温度を帯びた。


祈る人がいた。

嫉妬する人がいた。

見て見ぬふりをした人も、

その奥でなにかを信じ続けた人もいた。


誰もが一度は、あの光の名を呼んだ。

その声が、自分のものだと気づかないまま。


世界が息を止めたあとにも、

声はまだ、静かな底で揺れていた。


これは――

沈黙の先で、

それぞれがふたたび息を始めるまでの、

ひとつの声と、七つの呼吸の記録。

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