第35話 聖女とコラボ決定。翌朝ギルドで処刑待機なんだが?

【RankLive配信画面】

視聴者:1,600人/コメント:騒然

[カメラ:ギルド共有/常時配信ON]


 宿の部屋に戻ると、ギルドの共有カメラが自動で位置を調整し、俺の顔を追った。

 机の上のRankLive端末には、コメントが絶え間なく流れている。


【コメント】

「聖女とどうだった?」

「せまられた?」

「脅された?」

「DT卒業?」

「凡神、光堕ちして帰ってきた説」


(好き勝手言われてる)

(脅された……は鋭い)


「……ただいま。とりあえず、無事です」


 軽く手を振ると、共有カメラのランプが点滅した。

 次の瞬間、視界の隅で端末が震えた。

 

【通話:ミーナ】


(通話って……はじめてだな)

(……なんか、変に緊張する)


 通話ボタンを押すと、画面にミーナの顔が映った。

 背景はミーナの部屋らしく、小さな棚と花瓶が見える。

 明かりは少し暗めで、ランプの灯りが彼女の頬をやわらかく照らしていた。


『無事に着いたって聞いて、よかったです。

 でも……本当に、大丈夫ですか? なんか光の試練とか……?』


「ああ、うん。……まあ、目はちょっと焼けたけど、生きてる」


『焼けた?』


「照明で。眩しかっただけ」


 ミーナが一瞬きょとんとして、それからふっと笑った。

 緊張が少しだけほどけた気がする。


『……聖女さん、きれいでしたね』


(お、おう……)

(どう答えれば正解なんだ、こういうの)


「あー……うん。きれいだったかな?

 ……でも、なんか、光が強すぎて、よく見えなかった。

 やっぱ、俺はハーバル村くらいの明るさがちょうどいいかも」


 自分でも言いながら変なことを言ってる気がして、視線を逸らす。

 ミーナは一瞬黙って、それから小さく笑った。


『そうですか。なら、よかったです』


【コメント】

「不器用にもほどがある凡神w」

「フォロー失敗して成功してるの草」

「これが平凡の癒し力」


(……やっぱ、この声がいちばん落ち着く)


 通話を終えると、ギルドの共有部はすでに人影もまばらだった。

 片づけの音だけが遠くで響いている。


 端末をポケットにしまい、階段を上って自分の部屋に戻る。

 ドアを閉めた瞬間、静けさが降りてきた。


 ランプの明かりが机の上の端末をぼんやり照らしている。


(……はぁ)

(コラボ、することになったんだった)


 椅子に沈み込みながら、RankLive端末を起動する。

 通知音が鳴り、ドローンのランプが点滅した。


【RankLive配信画面】

視聴者:980人/コメント:深夜テンション

[カメラ:ドローン自動配信/常時配信ON]


「えっと……聖女さんとのコラボ、やることになってまして。

 まあ、やるって言っちゃったんで、考えなきゃいけなくて」


【コメント】

「凡神、ついに神域へw」

「光と草のコラボ!?」

「タイトルだけでバズる」


「いやいや、バズとかじゃなくて……内容だよ。

 何すればいいんだろうな」


 机に肘をついて考える。

 視聴者が次々に案を投げてくる。


【コメント】

「祈り配信」

「奇跡実況」

「凡神が聖女を教育する」

「地味スキル講座」


「祈りはちょっと……俺、信仰心ゼロだし。

 教育って何教えるんだよ。光の耐性?」


 軽く突っ込むと、コメントが一気に流れた。


【コメント】

「ユウマっぽくていいんじゃない? 地味なの」

「派手な聖女に、地味な凡神。バランス取れてる」

「草属性、信頼の安定感」


(ユウマっぽくていい……か)


「……まあ、そうだな。

 地味でも、ちゃんとやる。いつも通りで、いいか」


***


【翌朝/RankLive配信画面】

視聴者:2,400人/コメント:#聖女呼び出し事件 #凡神処刑待機

[カメラ:ギルド共有/常時配信ON]


 朝のギルドは、いつもよりざわついていた。

 カウンターの奥では職員が書類をさばき、依頼掲示板の前には冒険者の列。

 けれど、誰もが気になって視線を向ける先――そこに、聖女イリス=ノアールがいた。


 白衣をまとい、腕を組んで立つ姿はまるで光そのもの。

 ただ、その光の中にある静かな圧が、場の空気を冷やしていた。


「私を呼び出すなんて、どういうつもり?」


 声は一見すると澄んでいる。

 けれど、その奥に混じる「素の低音」が、静かに会場を支配した。

 柔らかいはずの響きが、刃のように鋭く落ちる。


 その一言で、ざわめきがぴたりと止まった。

 紙をめくる音すら消え、誰もが本能的に息を呑む。


「ええと、コラボなんですけど。

 色々考えて、一緒にギルドの依頼をやるのがいいかなと」


「なんですって?」


 声の圧が一段強くなった瞬間、空気が張りつめる。

 背後で誰かが息をのんだ音がした。


 俺は無言で指先を上げ、ギルド共有カメラを指した。


 ──配信、入ってます。


 イリスの睫毛がぴくりと揺れる。

 数秒の沈黙ののち――表情がスン、と変わった。

 微笑、完璧な角度、聖女モード。


「まあ……せっかくですもの。

 ギルドでの初仕事、皆さんにご覧いただきましょうか」


【コメント】

「切り替え早すぎて草」

「スンって音が聞こえた」

「職業:聖女(演者)」


(この人、ほんとにすごいな……色んな意味で)

(てか、前途多難な感じだけど大丈夫かな?)


***


カクヨムコン11に参加しています。

読者選考では、皆さまからいただく「★」が大きな力になりますので、応援いただければうれしいです!


転生したら【平凡】スキルで、女神に雑に送り出されたけど、気づいたら異世界トレンド2位になりました(本作)

https://kakuyomu.jp/works/822139838989360870



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る