ユリサ
鈴鳴さくら
サナの場合
あたしは
琉生とあたしは同じ病院で生まれたから、生まれるその以前から親同士交流があった。物心つく頃から琉生は端正な顔と明るく人懐こい性格を周囲に浴びせ人気者で…現在に至るまでみんなの太陽のようだ。
はにかんだとき見える八重歯なんてかわいくて、できればこれからもわたしの隣で琉生にずっと笑顔でいてほしいの。幼馴染という肩書きをそろそろ卒業したいのに。
「あ〜〜〜〜〜ん!琉生くんの歯ぜんぶ引っこ抜いてブレスレットつくりたいよう!」
ああ、うっとうしい!
腹の底から煮えたぎるようなどろりとしたものがいつかわたしの口を乗っ取って目前でうっとりと顔を惚けさせ、常人では理解できない言葉を吐く女…ユリサに罵詈雑言を吐かないか心配になる。
だけど琉生はユリサが好き…なんだと思う。
頭イカれてんじゃないの?と喉まででかかった言葉を飲み込んで苦笑した。
ユリサが転校してくるまで琉生の隣は常にわたしがキープしてきたし他の女は自制心があり寄りつかなかった。琉生と幼馴染だしなによりあたしは一番可愛いから。琉生にみあう女なんてあたししかいなかった。ユリサは転校初日に琉生に告白したし振られても毎日毎日毎日、琉生を呼びつけて告白をつづけていた。頭のネジがぶっ飛んでるとみんなこわがってユリサには近づかない。
「ユリサちゃんってかわいいけど…目が、ちょっとね」ユリサの行動よりも、ユリサのぱっちりした二重の長い睫毛に縁取られた大きい瞳は気分がわるくなるほど淀んでいて底なし沼を覗き込んでいるかのような不安がこみあげてくるのだ。わたしもユリサが気味が悪かったが、琉生が取られるのが嫌でユリサに近づいてトモダチごっこをつづけていた。ユリサが琉生に告白することが定番のような嫌な空気がただよいだした頃…
呼び出されたとき顔が赤くそまり目も潤んでいた琉生を見てわたしは危機感を抱いた。
嫌なら琉生はもっと早くに見切りをつけて断るはずだ。ユリサはなまじ顔が整ってる。満更でもないのかも。
だからわたしはこうして放課後にハンバーガーチェーン店で食べたくもないポテトをユリサと摘まみながら、くだらない恋バナに付き合っている。
「ユリサってほんと強い子だよ!失恋してもめげないで頑張ってアプローチつづけてるんだもんね、えらいね」
「そうかなあ…サナちゃんありがとお!琉生くんに振られて今日でもう76回だしぃ、そろそろユリOKもらいたいんだけどねえ!」
えへへ、と目尻を下げて笑うユリサの頭を、えへへじゃないわよ!泥棒したらただじゃおかないから…と引っ叩きたい。
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