うたをよみたい

真城幸

ひとつめ。


あの日。


少年は、いなくなった


透明な

がらすの

その向こうの

命の営みを


窓枠を

額縁のように撫でて。



あの日。


少女は、いなくなった


温もりが

あふれて

床に落ちて


ちらちらと流れる

光を

やわらかく移して。



今年も。


春は

電車の屋根にのって

やってきた


桃色の

優しいゆきを

降らして


今日。

こどもは

おとなに

おとなは

おやに


こどもだったおとなは

ねがいに満ちて

咲いて

枯れて

朽ちていく



還るとき。


ひとは、ひとのように悔やむ

ひとは、ひとのように嘆く


ひとは、ひとのようにねむる

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