第29話 新たな違和感、経過の真実

山道に入っても、彼の心に抱いた違和感は消えなかった。雨は小降りとなり、傘をさす必要もない程度だ。


展望台の駐車場に車を停め、ウッドデッキに立つ。眼下に広がる景色は、鉛色の大海原、雨に煙る港町、そして周囲を囲む山々。晴れていればもっと鮮烈だっただろうが、この遮るもののない開放感は、わずかに心のモヤを晴らすようだった。


景色は悪くない。道中も楽しめた。しかし、ここから得られるものは何もない。心の奥には、引っかかるようなもどかしさだけが残った。答えは出そうで出ない。


彼はため息をつき、再び愛車に乗り込む。違和感を抱えたまま、帰路へと向かうのだった。

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