[企画:しりとり] ペンタゴン荘の怪事件
高井希
第1話見知らぬ招待状
[登場人物]
山荘の持ち主 : 河原崎
被害者 : 佐藤、渡辺、美笠、大井、牛尾、豊臣、石川
県警 : 香坂課長、白金刑事、佐々木刑事
村の駐在
☆☆☆☆☆
招待状
***
新規オープンのお知らせ
拝啓 新緑の候 皆様にはますますご繁栄のこととお慶び申し上げます
さて このたび兼ねてより準備いたしておりました山荘「ペンタゴン荘」を〇月〇日にオープンする運びとなりました
つきましては 正式オープン前に 日ごろからお世話になっております皆様に感謝の意を表し 祝賀パーティーと一泊無料の宿泊サービスを開催いたします
ご多用中恐れ入りますが ぜひご出席くださいますようお願い申し上げます。
敬具
ペンタゴン荘 支配人
令和〇年〇月吉日
***
招待状には山荘と温泉の写真と、パーティーで提供される料理の写真が添付されていた。
ペンタゴン荘という山荘には覚えがなかったが、名称が変更になったのかもしれないと、佐藤は自分に言い訳した。
年々苦しくなっていく生活に疲れ、温泉に行きたいと思っても、その費用を捻出出来ない状況で、この招待状は魅力的に思えた。
最寄り駅に到着すると、数人が駅前のベンチに座っていた。
「こんにちは。ペンタゴン荘に行かれるんですか?」
「お仲間ですか?私、大石といいます。よろしく」
「私は佐藤です。こちらこそ、よろしく」
直ぐに迎えの車が到着し、山道を登り始めた。
天候にも恵まれ、景色も良く、運転手の冗談を交えたガイドのせいもあって、車内で皆、仲良くなって、楽しい気分で到着した。
駐車した目の前に吊橋があった。
「先月、大雨のせいで、崖からの落石が橋に直撃して、自動車が通れる橋が壊れたんです。今日はこちらの吊橋からペンタゴン荘に渡って下さい」
申し訳なさそうな運転手に、私は手を振った。
「風情ある吊橋だし、私は高所恐怖症でもないから、問題無いですよ。荷物だってほとんどないし…」
皆も私の意見に賛成し、吊橋を渡って目の前にあるペンタゴン荘を目指した。
吊橋からの眺めも素晴らしかった。
「川が蒼くて澄んでいる。新緑も目に染みる。来てよかった」
ペンタゴン荘は写真で見るよりも立派な山荘だった。
「名前のとおり綺麗な五角形なんですね」
「よくいらっしゃいました。支配人の豊臣と申します」
支配人は、私と同年代の柔和な顔をした、痩せ型で背の高い男だった。
「お世話になります」
「では、お部屋にご案内します」
山荘にしては豪華な部屋にとおされて、早速、着替えを持って浴室に向かった。
掛け流しの温泉だと、運転手が言っていた。
薄い乳白色のお湯に、心も身体も若返った気分になる。
「ここに来てよかった」
太めで、白髪の男性がしみじみと、呟いて、顔を拭った。
「本当に。実は招待状に『日ごろからお世話になっております皆様に感謝の意を評し』ってあったけど、身に覚えが無かったから、ちょっと心配だったんです」
「渡辺さんもですか? 私もです。どういう訳でしょう?」
「 この山荘の持ち主の別の旅館の顧客リストに我々の名前があったとかじゃないんですか?」
「ああ、そうかもしれませんね。我々、過去に、同じ旅館に泊まっていたのかも…」
風呂からあがって、山荘の周囲を散歩していると、山荘の名前入りのバンが駐車してあった。
そして、その先に、セメントの橋が壊れて、崖下に落ちているのも見えた。
近くに大きな石も転がっていた。
「あっ、いけない。もうすぐパーティーの時間だ」
佐藤は慌ててパーティー会場に向かった。
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