第4話 リズムがひとつになる朝

2人の足音は、

完全に同じリズムで動き出した。


横断歩道へ向かう人の波が、左右に流れていく。

街の音はすべて遠くに霞み、

残るのは、自分の歩幅と——

どこかで響くもう1つの足音だけ。


彼は、ネクタイを少し緩めた。

夜更かしのツケが残る身体に、

コンビニのコーヒーの香りがやけに沁みる。

昨日と同じ朝なのに、

トーストの焦げも気にならないほど、足取りは少しだけ軽かった。


彼女は反対側の歩道で、

片耳のAirPodsを軽く押し直す。

ノイズキャンセリングが切り替わり、街の喧騒が遠のいた瞬間、

Apple Watchも拾えない心拍の音がはっきりと聞こえた。


Apple Watchの秒針が、

彼の足音とぴたりと重なる。


20メートル。

10メートル。


彼は顔を上げ、朝日をまぶしそうに目を細める。

彼女は前髪を押さえ、白い紙カップを持ち直した。


ほんの一瞬、

同じ風が、2人の間をすり抜けた。


——世界が、1つのリズムで呼吸している。


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追記

《初投稿で初PVがつきました!読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。

これからも頑張って続けていきます!》

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